みやちゃんとの再会
昨夜、いきなり三年ぶりくらいに、みやちゃんに電話をかけた。みやちゃんは、15年以上前に北本市に我が一家が数年間住んでいた頃の、今はなき居酒屋ねこ常連の一人である。ぼくは、北海道に移ってからも居酒屋ねこにはよく顔を出し、その際、いろいろな常連さんの家にそのまま雪崩れ込んで泊めて頂いた。あるいは、ねこの座敷にそのまま寝泊りさせてもらったりと傍若無人なぼくであったが、その頃、とても親切にして頂いた人の一人がみやちゃんである。
泊めて頂いた翌朝、早く起きて作ってくれた朝食の味噌汁の美味しさが忘れられない。
居酒屋ねこがなくなってから、みやちゃんとも会う機会がなくなったので、今回、呑もうっていうことにしたのだ。
北本駅前の懐かしい本屋のあたりでうろうろしていると、みやちゃんは少しだけ髪の毛を白くさせて駅の階段を下りてきた。最近とても美味い店を見つけたのでそこへ行こう、と誘われるままに、酒処かくえいという店に入った。
本当だ、とても美味い。特大のホッケやカツオのタタキを頂きながら、〆張鶴や司牡丹/船中八索の冷たいやつを呑んだ。カウンターには女性客が多く、この味ならなるほどと納得が行く。
昔のねこの常連メンバーやマスター一家の動向を聞いて、楽しかったボーリング大会、秩父での水浴び、名も知らぬ小川でのバーベキュー、野沢温泉でのスキー、河川敷でのゴルフなどなど、本当にねこの家族とは、儲けにもならない週末に食べものばかり依存しちゃって、安い会費で遊んでもらったものだ。だから店も赤字になって、近所にできた白木屋や笑笑に負けてしまったんだと思う。
悲しいな、と思いながら中年男二人は、居酒屋のカウンターで昔のように酔いを深め、次第に脈絡のない会話に脳髄を浸してゆくのだった。