シュンの日記なページ

当別町スウェーデンヒルズ移住者 ブックレビュー 悪性リンパ腫闘病中 当別オジサンバンドOJB&DUOユニットRIOのVocal&Guitarist ツアーコンダクター 写真 スキー 山 田舎暮らし 薪ストーブ

強風域を辿って

 夜中に上陸したハリケーン・サイズの台風のおかげで、真夜中の2時半に叩き起こされた。事務所に接した倉庫のシャッターが強風で壊れたらしく、警備会社から連絡を受けた職員が指示を仰いで来たのだ。パレットを当てがって簡易扉とし、一旦帰宅を命じた後、朝を待つ。
 本社との連絡やら、修繕業者、大家とのあれこれを指示してから、ぼくは釧路を後にする。しっかりと和商市場でマグロのづけ丼を朝飯に食べることだけは忘れずに。
 道内のほとんどが強風域に入っているらしい。しかし空は晴れ渡っている。ときどき分厚い雲が、F1レースのようなスピードで空を渡って行く光景を除けば、まさに穏やかな日和といえる。
 美幌峠から、波立つ屈斜路湖を振り返りつつ、女満別方面に下ると、ラジオから石北峠が落石の恐れで通行止めとの知らせあり。阿寒方面に向けて再び南下。
 津別町相生の道の駅で、ぶっかけ蕎麦を昼飯に食べるが、これが特筆もののの美味さだった。腰も切れもある蕎麦の感触に、数種類の茸の天ぷら。窓辺からは絵本の中のような風景。昔の軌道車や貨物車が飾られた、使われていないプラットホームに日差しが降り注ぎ、一列に並んだ白樺の葉が横風に裏返って、白くなって見える。
 車に戻ると、石北峠が開通となったとのニュース。また車種を元来た道に向けねばならない。
 セピアに見える正午の日差しを不思議に思いながら、チョコレート色をした川に沿って、陸別に抜ける。廃止が決定したばかりの3セクふるさと銀河線に沿って留辺蕊へ北上。途中小利別の駅では、その昔、貧乏な新婚旅行で一泊したことのある廃校利用の旅人宿「夢舎」の看板に思わずブレーキを踏んだ。
 当時から廃線の危機を脅威と感じていた夢舎の宿主の事が思い出される。当時の自分の若さを思い出す。知らず、じんと来るものがこみ上げてくる。強い風が木立をさらい、奥深い空気の透明さだけが張り詰める、とてもこの世とは思えない、天国のような土地。もちろん冬には地獄にだってなり得る道内最低気温記録の土地でもある。
 先を急ぐ。おんねゆ温泉の道の駅に15時着。ちょうど、世界最大のからくり時計が時を刻み、多くの観光客を引きつけている。ソフトクリームを食べて、陽だまりの中で、深呼吸する。
 強風で荒れ果てた石北峠、小雨がつぶてのようにフロントグラスを叩く北海道一のハイロードを走り抜ける。大雪ダムは泥沼のように茶色く汚く、しかし濁流の迫力に満ちていた。層雲峡の二つの滝は、濁流を白い見かけ状の流れでごまかしていた。
 上川より道央道に乗り入れ、あちこちのSAで一息も二息も入れながら、比較的穏やかな様相を呈している石狩平野に辿り着いた。18:00。