そそる歌声

　エゴ・ラッピンのボーカルは本当にたまらない。『色彩のブルース』をラジオで聴いたときには最初、カルメン・マキの復活かと真面目に思ったくらいで、シックな美声のエゴ・ラッピンがここまで崩した感性豊かな声をメロディに乗せてくるとは思いも寄らなかった。その後、思い出すようにカルメン・マキの古いアルバムを漁り、エゴ・ラッピンもカルメン・マキも最新アルバムまで買い漁った。エゴ・ラッピンは『嘴にチェリー』という曲が『探偵・濱マイク』の主題歌で使われ、少し有名になってしまい、古いファンとしてはとても残念だけれど、ぼくは数年かけてずっと彼女の歌声を車で聴いている。カルメン・マキの若かりし頃のアルバムでは、クリエイションの武田和夫とのセッションアルバム『ブルース・クリエイション』が凄まじい拾い物である。この歳になって、新しい音楽がさして必要でなくなった今でも、ぼくのなかに入ってくる声質というものがあり、それが新しいエゴ・ラッピンであり、古いカルメン・マキである。彼女たちの声は時代を繋ぐ双子のように似ているとぼくは密かに思っている。