幻の梟
養老牛温泉の宿に到着。養老牛という名をあまり好きじゃない。よりによってアイヌ語をこんな平凡な漢字にあてがうなんて、なんという命名者の罪だろう。「エ・オロ・ウシ」(頭=山鼻がいつも水についているもの)、または「イ・オロ・ウシ」(それをいつも水に漬けているもの)が本来の名である。
原野の北方を限る原生の森のなか、早く流れる瀬の畔に宿はある。豊富な湯量を誇る温泉が出て、動物たちが集まる。
到着した夕方、シマフクロウの姿に驚いた。夜行性の鳥がなぜ? 宿の人によると、昨夜このあたりで夜遊びが過ぎて朝の吹雪のおかげで帰りそびれたんだろう、とのこと。どこかの自己管理の悪いサラリーマンみたいに言うのが、ちょっとおかしかった。
クロテンも宿の囲炉裏っ端に来ていた。カメラを構えると、いつの間にか流れを渡って、シマフクロウの方向に危うく近寄ってゆく。その姿に宿のなかが盛り上がっていた。相変わらずの湯宿。ほっとする光景だ。