バニー・レークは行方不明
やっとこの映画にありついた。1966年、撮影賞モノクロ部門でアカデミー賞を受賞している。キワモノと言ってもいい映画なのかもしれないが、原作とは人物設定などがだいぶ異なる。サイコスリラーの様相が高い。モノクロでなきゃ表現のしようのない夜の暗闇の深さが本当に黒々と描かれていて、素晴らしい。
刑事役のローレンス・オリビエが作品からB級のイメージを取り払っているとは思うけれど、ロボットみたいな顔のキア・デュリアは『2001年宇宙の旅』で大抜擢される以前、この映画で十分な存在感を示していたのであった。
日本で原作の邦訳が出たのは2003年。原作自体は1957年のものだから、50年近く日本語では紹介されることがなかった作品である。ハヤカワがポケミス名画座という企画をやってくれなければ、この小説とも、映画とも出会うことはきっとなかったろう。小説も映画も、別の作品のようであり、それでいて狂気の描き方にどこか共通項がある。夜の暗闇の深さ、全体の空気の黒さにも。素晴らしい。
ぼくの小説感想は→こちら「ポケミス名画座」から