シュンの日記なページ

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『ザ・セル』

 つくづく異常な映画だと思った。昔、都内のどこぞの名画座で異常映画3本立てというのをやっていたが、あいつらの仲間入りをさせたい作品である。ちなみに、そのあいつらとは『イレイザー・ヘッド』『アルタード・ステイツ』『スキャナーズ』。
 『ザ・セル』は『アルタード・ステイツ』に最も似ているか。マスコミでは『羊たちの沈黙』と『マトリックス』を合体させたような映画と評したりもしていたけれど。
 シリアル・キラーの脳内世界に侵入するという異常な試みは、これまでに映画で数限りなく試みられてきた異世界への侵入というものの最も現代的な焼き直しである。異世界は子供にとっての『バンデットQ』であったり、プログラマ−にとっての『トロン』であったり、(あ、どちらもボルキャラ役がデイヴィッド・ワーナーであるな)、『マトリックス』であり、『アルタード・ステイツ』である。
 異世界は映画の作り手側にとって自由に何をやってもいい世界であり、だからこそテクニカルな見せ所になってゆく。そういう実験映画の風貌を持つ映画は、往々にしてドラマ性を持たせ切れないという弱点がある。映像や音響や撮影技術を駆使して表現の極北を目指すが故に、親しみがもてない人工的な作品になりがちなのである。
 その人工的な空気をもたらしているのが、ジェニファー・ロペスの完成度の高い美しさであり、同じ一人の女優がこれほど様々な表情や様々なカラーに塗り替えられる映画はあまりないだろう。『Uターン』のワイルドで地味で着替え一つしないJ・ローと同一人とはとても思えないほど、カラフルに人工的に、映像として美しい。それでいて、現実世界でときにナチュラルな表情を見せる彼女がきらりと光って見えるところが、この映画の最大のポイントなのかな、とも思ってしまった。
 奇想に溢れた人工的作品中、ほんのわずかながらも極めて人間的な表情と感情が光るシーンである。