シュンの日記なページ

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映画と父と鉱山町

 『ノーカントリー』がアカデミー四部門制覇だそうで、まずはめでたい。というのも、好きなコーエン兄弟だし。それ以上に、原作が『血と暴力の国』コーマック・マッカーシーだし、このノワールは、しっかりと『このミス』では5位で投票しているし。もっとも予想通り『このミス』では12位という揮わない結果だったけれども。いずれにせよ原作で当たりだった本が、翌年しっかり凄い映画になって世界を席巻するというのは、やはり気分がいいものだ。

 日本アカデミー賞ができたばかりの頃、黒澤明監督は最初からその賞を認めず、下馬評高かった『影武者』を辞退したのだった。そういう時代からもう30年も立って、今年は日本アカデミー賞は『東京タワー』が受賞。こちらは、亡き父が最後に選んだ宮城県の山奥の鉱山町でロケをした映画だ。今、昔の九州の炭鉱をイメージできる村は九州にはなく、東北の寒村にまでやってこなくてはならなかったのだと言う。父の元気だった頃に、訪ねてゆくと、撮影隊がずっと入っている、と父が嬉しそうに言うのだった。
 今も、ロケ地は保存され、そのまま残されている。夕張のように映画の有名な土地でも観光地でもないから、第一回日本アカデミー賞を受賞した『幸福の黄色いハンカチ』のようにずっとずっと後世まで人々に愛でられる場所になるかどうかは心もとないけれど、今も映画の魂が生きているのなら、父のついの住処であった小さな鉱山町がロケ地としてずっと残ってゆくことを祈りたい。
 その映画をまだ見ていない、親不孝な息子ではあるけれど。父だってこの映画を見ているはずがない。映画館などはあの町には大昔鉱山が栄えていた頃にしか存在しなかったからだ。
 でもこの映画が大賞を獲ったことを知ったら、わがことのように笑顔をほころばせたに違いない。そんな表情だけは、容易に想像することができる。