世界の終わりの旅
コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』読了。
こういう小説を書ける作家がアメリカにいるというだけで、十分に奇蹟だ。
何らかの理由で世界は破滅している。そんな荒涼とした道を父と子が旅を続ける。寒さの中、南を目指して。モノクロームの世界。家も車も焼け爛れ、生き物の気配はなく、植物もすべて死んでいる。絶滅の世界。
『渚にて』という映画を思い出す。核戦争で世界が滅び、誰もいなくなったビーチに風だけが吹きすさぶラストシーンの忘れ難さ。池袋文芸座が時おり催していた「陽の当たらない名画祭」で上映されたものだった。その映画さえも甘いと思わせるような小説がこの『ザ・ロード』。既に映画化は決まっているらしい。
『ノー・カントリー』(小説名『血と暴力の国』)でアカデミー賞を総なめにした作家。荒涼とした風景や、ロードノベルであること。共通する何かがある。他の和訳作品も読んでみたくなってきた。