『ファイト・クラブ』
微熱があり、眠気が激しい中で、チャック・パラニュークのニュアンスをかなり正確になぞった、このデイヴィッド・フィンチャー作品を見ていると、映画の迷宮にか、はたまた自分の脳髄の核に向かう睡魔・夢の中へか、吸い込まれてゆきそうになる。悪夢映画なのか、微熱映画なのか、メディテイションにも似た作用を生み出す、奇妙な映画は、原作が奇妙なのだから映像化すれば、よりストレンジ度を増強させてしまうのも仕方ない。やっぱりパラニュークは映像化しにくい。よくぞここまであの怪テンポとイメージの洪水みたいな文体を再現できたものだ。それ以上によくこんな映画を日本の劇場で上映したものだ。ブラピやエドワード・ノートンといった人気俳優を連れてきたって全編まともに持った観客はそう多くはなかったろうと思う。日本のブラピ・ファンは『デビル』みたいなわかりやすい方の映画でこの俳優を、好きになっているのだろうから。