シュンの日記なページ

当別町スウェーデンヒルズ移住者 ブックレビュー 悪性リンパ腫闘病中 当別オジサンバンドOJB&DUOユニットRIOのVocal&Guitarist ツアーコンダクター 写真 スキー 山 田舎暮らし 薪ストーブ

春との旅

 ポストを覗いたらTSUTAYAから『春との旅』と『ハートロッカー』のDVDが届いていた。病床の身には大変嬉しい組み合わせだ。ずっしりと重い映画はどっしりと腰を落ち着けて観るべきものだから。
 あ、インフルは完全に直った感じがする。解熱剤も昨夜から服用していない。熱も下がった。ただ大事を取って外出はせず、家の中で用意した糧食で立てこもっている状況。
 
春との旅【DVD】

 さてその『春との旅』。
 昼間、ブックレビューの更新に勤しんだりしていたために観始めたのが真夜中になってしまった。深夜に増毛から始まり気仙沼鳴子温泉、仙台、日高の旅。どこも皆、土地鑑のある場所ばかりで風景も思い当たるところばかり。日本映画ならではの近さだ。
 それより何より徳永えりの上手さって何だよ、まずいじゃん、もらい泣きしちゃうじゃん、とロードムービーだから旅路の間ずっと引きずられ、最後のクライマックスシーンが彼女がなくとぼくもしっかり泣いていました。劇場じゃここまで感情を発露して見られないよなあ。
 9.11の年に小林監督の手によって書かれた脚本、外に向かう社会的警鐘映画が主流の矢先、ロケと俳優の演技力と家族というテーマだけでひきずってゆく昔ながらの日本映画を実現するのに5年かけても芽が出ずついに仲代達也へのシナリオ送付を思いついた。仲代はこの映画化に大賛成をしてくれ、その後さらに3年を経過して映画ができたという。
 それにしても競演シーンで香川照之を完全に食ってしまった徳永えりの鬼気迫る演技シーンには秘密があった。
 日高ロケの前日、実際にロケ隊は飛行機ではなくフェリーで移動するが、彼女は監督によってデッキに立たされる。一晩中船室ではなく、デッキにて夜の海を見て立ち続け演技の集中を高めるよう指導される。スタッフが皆デッキに出て彼女を取り巻いたが、監督は全員を追い払う。これはメイキング映像で観て驚いた。その翌日の彼女の演技はがらりと変わったとの監督の賛辞。なるほど自分が泣かされた背景にはそうした魂入れがあったか。
 自分もかつて防災訓練で被災者役の看護学校生徒などに役作りの魂入れをするために血まみれの赤ちゃん人形を抱かせて、泣かせたことがある。吹雪の中死んだ子の名前を呼び続け、生きていると信じて日高の雪原を彷徨う役柄を演じているうちに、彼女はぼろぼろと泣き出してしまう。他にも沢山の俄か役者が、魂入れの時間をたっぷり取ることによってリアルさを増し、防災訓練は過激でリアルな被災現場に変わったものだった。
 その同じ日高で、徳永えりは渾身の慟哭を演じ、ぼくは心を持っていかれてしまったわけである。
 それにしても新聞広告を見た途端に惹かれたこの映画、やはりどこかで劇場で見直したい気持ちがある。
 毎日映画コンクールにて日本映画優秀賞を受賞、さらに徳永えり、やはりであるスポニチグランプリ新人賞受賞とのこと。作品も、徳永えりという役者も今後がすっごく楽しみである。