ダークサイド不忍池
神保町まで地下鉄で出たので、そのまま会社には戻らず、しばし古本屋街の裏路地の匂いを懐かしみながら、本郷に歩き、またも、ちどりに立ち寄った。客は一人かせいぜい二人で、今日はたらちり一人鍋を頼んだら、豆腐がないので厚揚が入ってやがった。マスターとそれでも切々とした話をいつものようにする。落ちつくカウンターだ。
帰り道は、湯島経由で上野に歩く。
夜の不忍池界隈は基本的には変わっていないが、それでも幾分か昔の猥雑で不穏な気配が薄れているような気がする。あのピンク映画館とそこに屯するゲイの連中が行き交う路地はどこだったっけ? ときょろきょろしていたら、ストリップ小屋の横に出た。上野らしさは相変わらずで、少し安心する。
このあたりは本郷に勤めていた頃、よく何人かで歩いた場所だ。花見もやった。その花見の気配は遅い時間のせいか、桜がもうないのか、どこにも感じられなかった。