シュンの日記なページ

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静謐の塩谷岬から

crimewave2008-08-24

 小樽の塩谷岬にかつて存在したユースホステル遊飛館。そこに通い詰めていたのが、埼玉時代に同じマンションに住んでいたM夫妻。旦那さんのほうが特に独身時代から鉄道による北海道の旅が好きだったそうだが、昨年末、ぼくよりいくつか若い年齢で亡くなった。彼の遊飛館時代の仲間たちとの弔いを行おうと、遺族であるM奥さん、我が家の息子と同じ年齢で幼少時の遊び仲間だった長男、その後年を経て生まれた次男といった三人が北海道にやってきた。
 ぼくは家内に運転手役で駆り出された。
 かつて遊飛館をやっていたH家を訪れるが、なるほど、夜更けて暗闇が訪れると、塩屋駅に向う列車鉄道が夜空に光を浮かべる幻想があり、日中は積丹方面を見渡す切り立った海岸線と穏やかな湾との美しさがコントラストを成す風景が窓辺に広がる。高台の上から見渡す海にシーカヤックが漕ぎ出してゆき、付近にはコスモスの花が咲き誇っていた。
 地元の小説家・伊藤整の文学碑が立つ丘に集まり、抹香臭いのは嫌だと遺言を残した故人の言葉どおり、リラックスした形で、海に向けて、手を合わせるだけ。遊飛館が見える丘に眠っておくれとの皆の思い。

 ちなみに文学碑の碑文は「海の捨児」

「私は浪の音を守歌にして眠る 騒がしく絶間なく 繰り返して語る灰色の年老いた浪 私は涙を涸れた凄愴なその物語りを つぎつぎに聞かされていて眠ってしまふ 私は白く崩れる波の穂を越えて 漂っている捨児だ 私の眺める空には 赤い夕映雲が流れてゆき そのあとへ星くづが一面に撒きちらされる ああこの美しい空の下で 海は私を揺さぶり上げ揺さぶり下げて 休むときもない」

 小樽の庄坊番屋にて集まりなおし寿司を突く。ここは元消防署だった建物を内装のみ改築した有名な寿司屋である。だから本当は消防番屋。
 解散し、遺族だけをつれて幼い子どもの要望に従い小樽水族館に午後を遊ぶ。風が出てきて波が強かったが、子供たちの元気をもらって心だけが洗われる思いがするのだった。