『エリジウム』
『第9地区』の監督作品だと知って、早速劇場へ走る。
エイリアン居住区と差別を風刺的に扱った『第9地区』ほど斜に構えた作品ではなく、むしろ勧善懲悪のヒューマンな冒険SF映画となっているところが、少し期待はずれではあるが、まっとうな人々を惹き付けるには『エリジウム』の方がよほどストレートに作られており、正統派であろう。
それにしても地球を第9地区にしたような設定、天国のようなエリジウムという人工衛星に支配階級という、ヒエラルキーの格差と軋轢を土台にした作品づくりが、前作そのままというのが楽しい。人口増加により貧しく凶悪化した過酷な地球と、天国のようなエリジウムは、今の現実の世界の中でも十分に当てはまるだけに、映画作家のシニカルで皮肉な視線だけはぶれていない。
マット・デイモンがボーン・シリーズのようなスーパーな存在ではないヒーローであるところに泥臭さが出ている。
それにしても映像が美しい。造形の美学が随所に見られるのは『アバター』以来、と言っていいかもしれない。