汽水の湖
風蓮湖はまだ解けやらぬ氷に覆われていた。シーズン前だからなのか、意気込んで入った道の駅<スワン44ねむろ>のレストランでは、ちょうど14時で閉店らしく、その直前に入った我々に対し、ウエイトレスはご飯ものは終わりだと非情に告げる。両隣のランチを食す姿を恨めしく思いながら、麺類ならいいとのことなので、ラーメンやうどんを食べることにした。
根室でしか食べることのできないエスカロップはとりあえずお預けになってしまった。
汽水の風蓮湖、その湖畔にある民宿<風連>は、加賀乙彦の傑作『湿原』で主人公が、犬ぞり体験をするモデルとして描かれた宿である。実際に泊まった四半世紀前には、もはや犬たちはこの宿にいないし、宿主もそのわけすら説明してくれなかったのでがっかりしたものだ。
でも宿の奥様の方は温根沼から落石へ歩いて抜ける地図とおにぎり(こちらは有料)を持たせてくれたっけ。
風蓮湖の氷が解けると、水鳥たちが集まり、バードウォッチャーを呼び寄せる。
風蓮湖と春国岱が織り成す、目の前の、タイガの森・汽水のラグーンは、ラムサール条約指定の場所である。