シュンの日記なページ

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香港春節



 8時過ぎにホテルを飛び出し、尖沙咀(チムサーチョイ)から中心(セントラル)駅に出て、MTR東涌線香港駅より終点の東涌(トウチョウ)へ。途中から地下鉄は地上に出て、ランタオ島へ。湾を右に見ながらディズニーリゾートへの線を分けると、終点。
 こちらから長大なゴンドラ・ロープウェイである昂坪(ゴンピン)360に乗る。クリスタル・ケビンは床が透明で、真下が見える。もっと高度感に震える乗り物かと思ったが、実際にはそうではない。前で立ちっぱなしでカメラを構えて動き回る中国人と、巨体で立ちっぱなしで家族に大声でしゃべりまくる中国人が二人とも同乗していなければ、きっと静かで、眺望が素晴らしくて、快適なのだろうなあ。
 ロープウェイを降りると、昂坪。ここでは世界最大の野外大仏を詣でる。


 立ち並ぶ小奇麗な店のあいだを抜けると巨大な門があり、その内側には土産物屋がいくつか。店先で売られるトウキビや豆腐花(絹ごし寄せ豆腐)、腸詰めなどがいい香りを放つ。そのあたりで犬が何匹も地べたに寝そべってくつろいでいる。
 大仏下の広場を経て、急な階段を登る列に交じる。
 山頂からはランタオの北岸の海岸線を切り取る空港を見下ろす。
 山上の聖地である。

 大仏への石段の途中、ただ歩いて登るのではなく、身長の分だけ進んで、体を地に投げ出して進む<五体投地>をする姿が見られた。
 巡礼の黒服の姿ばかりではなく、若いブーツ姿の女性独りであったり、普段着の家族であったり。
 河口慧海の『チベット旅行記』では、カイラス山への巡礼たちの五体投地の記述がクライマックスとなっている。後遺症障害のため階段を下るのが少し大変である妻にそのことを話すと、目の前の風景に感銘を受けた様子である。
 初めて目の前にする五体投地
 心打たれる光景である





 香港の春節旧正月)の日。この日を狙って来たわけではないのだが、改めて山上の聖地での賑わいに接すると、日本とは異なる文化に接することのできた幸運を感じざるを得なかった。
 お土産に線香でもと考えていた妻の期待を遥かに裏切る巨大線香を捧げ持つ仏教徒の姿を大量に目にし、ともかくも圧倒された。日本の初詣のように足の踏み馬もないほどの混雑がない代わりに、強力な信仰心を表現する人民の姿を目の前にする。
 この信仰心と日常のモラルのない振る舞い(並ばない、大声での携帯、電車やエレベーターへの無遠慮な乗り込み、恥じらいのない席取り、等々あまた!)とが矛盾するんだよねえ、とチャイニーズの文化に首を傾げる我々であった。


 ランタオ島のハートスートラ(心経簡林)は、香港随一のパワースポットである。どこにあるのかわかりにくいが、地図を見つつ、なんとか「心経簡林」の表示を頼りに木立の中の小径に分け入る。"Garden Restran"などの表示もあったが、ものの見事に廃屋と化している。南に弥勒山、北に鳳凰山という見事な山に挟まれた鞍部(コル)に当たる場所に、巨大な経木の並んだハートスートラが立ち現れる。
 日常生活とは違う風の吹く場所、といった感覚でしばしここで佇む我々であった。


 ハートスートラから山道をさらに散策。"Wisdom Path"は、鳳凰山弥勒山との登山路を分ける峠であるらしい。キャンプ地もあり、登山装備のテント客が二張りあった。
 北の尾根にハートスートラ(心経簡林)の経木を振り返ることができる。



 バス停が見つからない。お寺(寶蓮寺)の方にあったのかな?  お昼をケーブル山頂駅付近の中華レストランで取る。酸辣湯(スーランタン)があり、辛くて美味しいそいつを食す。  揚げ焼きそばに、香ばしい紅色の酢をかけて食べる。この酢を帰りに買って帰ろう。  店を出ると獅子舞が出ていた。  ケーブルで東涌駅に降りると、乗り場は凄まじい人ごみになっていた。早く出かけてきてよかった。
 それにしても巨大マンションが建っているなあ。凄い!


 午後は、中心(セントラル)駅でゆっくり香港島を歩き回ろうと思ったのだけど、駅前は、見たこともない人ごみになっていて、歩行不能に近い。なんだろう、ニューイヤー・パレードに集まった人たちが飽和現象を起こしてしまったのだろうか?
 逃げ出すようにしてハーバーに向かい、チムサーチョイ行埠頭(ピア)へ。スターフェリーに乗って、またもや湾を渡る。沢木耕太郎が陸よりも海の道を好んだ気持ちが、少しだけわかる気がした。

 夕食は、友だち家族たちとみんな(6名)で、四川料理の店へ。とにかく辛いという店で楽しみであったけれど、思ったより食べられないのは、チムサーチョイのマックで15時過ぎにポテトフライを食べたからかな。
 火鍋はメニューにないが、とにかく鷹の爪をたんまり放り込んだ凶悪な炒め物にびっくり。みんなで、ひぃはぁ言いながら食べる夕食であった。

 尖沙咀(チムサーチョイ)の新年の夜は、ニューイヤーパレードの喧騒の中で迎えられる。多くの人種が往来するメインストリートが、どんどん膨れ上がる。パレードの内容はよくわからないが、一瞬だけ立ち寄ったぼくらの目には、順番に現れる楽隊と、それらが通り過ぎるよりもずっと長く弄んでしまう間ばかりが映る。
 入国した日のバスの中でツアー会社経由でマッサージを予約した。
 その際、マッサージ師はお喋りしたり、施術中でも携帯に出るなど、態度が悪いと経験者の友人たちがクレームを事前につけたので、案内者は予約の際、重々に注意したのだが、本日、やってきた二人の施術師は入るなり挨拶もせず喋り合っており、施術の途端勝手にテレビをつける。ニューイヤーだからテレビを観たいみたいなことを言ってくるのだが、今度は携帯に出る。テレビを見て笑う。施術師は二人とも若い女性である。全然ガイドの言ったことが伝わっていない。
 最後にチップを要求される。あれ? 旅行会社の予約するプランに関してはチップ込み込みと説明されていたのだが、話が違う。
 翌日、友人たちの話では、ほかの施術師はチップはなしであったらしい。一部屋は静かで、他の一部屋はお喋りがうるさい人たちだったらしい。
 郷に入れば郷に従えというけれども、まあ、いろいろ呆れることの多い国ではあるなあ。
 風呂とマッサージと一旦落ち着いた感はあったものの、そうしたもやもや感などもあったことから、改めて少しだけ散歩に出る。昨夜の華記小食(WAH KEE SNACKS)にはまた立ち寄って、串焼きを買い込み、ホテルの部屋で、喧騒や花火の音を耳にしながら、缶ビールを傾ける。二日目の夜はこうして終わってゆく。