丸木美術館 原爆の図
夕方にはまた帰って行ってしまう息子を連れて、東松山の丸木美術館に出かける。
以前から丸木夫妻の書いた巨大絵画である原爆の図を見たかったのに、近場の北本に住んでいた間には結局見ることがなく、その間に丸木位里さんは亡くなってしまった。
それから早や15年が経過して、今頃になってこの伝説の美術館を尋ねる。
原爆、南京虐殺、アウシュビッツ、水俣と、民衆の地獄を切り出したどれもこれもが巨大な大作となって展示されている様は圧巻である。
- 作者: 丸木位里,丸木俊
- 出版社/メーカー: 小峰書店
- 発売日: 2000/07/01
- メディア: 大型本
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ちょうどビキニ環礁で行われた水爆実験に巻き込まれ被爆した第五福竜丸事件のルポルタージュの挿絵を書いたリトアニア移民の画家ベン・シャーンと丸木夫妻の共同制作の特別展示なども行っていた。
今、日本が、福島原発問題で世界の注目を浴びる中、丸木夫妻が生きておられたら、真っ先に震災の現場に駆けつけ、絵筆を執ったであろう。
戦争の爪痕というにはあまりにも残酷で生々しい地獄絵図を等身大以上の大きさで、見てしまったぼくら父子は、その圧倒的な質感の前で背筋を震わせている。
夫妻のアトリエが小高文庫として残されていて、炬燵や茶菓子、詩集などがカンパ箱とともに用意されており、アトリエ・カフェのように利用されている。時間があればもっともっとくつろいで、ここに置かれた画集や関連図書のページに夢中になってしまいたいところだ。
都幾川の流れを見下ろす素晴らしい絶景のロケーションに建つこの美術館、今後も何度も訪れたいと思う。
帰りに東松山から北本へ荒川を渡り返すところ、あまりにも鮮やかな菜の花の群落があった。北本の桜堤の方も桜が五部咲きほどにはなっていた。日本全体が悲惨な宿命を抱えていようがいまいが、季節は、既に春満開への秒読みである。