シュンの日記なページ

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痛みの種類

 全然本が読めない。とも言っていられない。来月に入るときっとすぐに宝島社から『このミス』アンケートの依頼が飛び込んでくるに違いない。読み残し、と思われる本を読んでしまわなきゃ。矢作・司城コンビの新作はまだ書店に並んでいなかったなあ。

沼地の記憶 (文春文庫)

 というわけで今日はトマス・H・クックの『沼地の記憶』読了。8月札幌帰省の最終日か何かに読み始めたから、もう一ヶ月になんなんとしている。決してクックが悪いわけではなく、こちらの事情だ。
 果たして、クックの記憶シリーズらしいシックでドラマチックな展開とそれを紡ぎ出すストーリーテリングの見事さは唯一無比のオリジナル・ワールドである。読むたびに洗練されてくるのだけれど、本当に、その人間描写は深いし、抉り取られる心の傷口は痛いし、流れ去る時間の向うに横たわる過去は、帰ることのできない悔恨と郷愁に満ちている。アメリカ南部でならではのヒエラルキーと、狭量な哲学と、息苦しい田舎町に展開するデルタの主の物語。原題"Master of The Delta"。
 続いてキャロル・オコンネルのノン・シリーズ新作『愛おしい骨』。出だしから掴みが抜群の作品であるなあ。先が楽しみだ。海外ミステリは翻訳数が圧倒的に少なくなりつつあるが、選別されて書店に並んでいるこうした作家たちは、いずれも質が高い。たったの6冊だけ選び出すのが、日本作家に較べて、本当に難しく、痛みを伴う作業になるのだ。嬉しい痛みではあるけれども。
 風呂が沸いた。さて、膝と肘の擦り傷の痛みをこらえ、湯船に身を沈めるとしよう。こっちは嬉しくもなんともない悔恨だけの痛みである。ふう。