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蕨、再訪

幻夜 (集英社文庫)

 東野圭吾の『幻夜』がWowowでドラマ化されるそうだ。かなり楽しみ。

 今朝は車で出社。歩いて行けない距離ではない職場へ、車で10分強。いいねえ、この通勤距離。

 今日は仕事で蕨の街を訪れた。蕨高校の出身であるという以上に、ぼくが最初の一年間だけ通った北小の校庭、ぼくが一週間ほどの入院を経験した市立病院、七夕祭りに繰り出した商店街などなど、幼い頃の、思い出の土地が、なんとも懐かしい。
 三軒長屋みたいな古い住宅に住んでいたことを、今も残る似たような昭和の木造トタン屋根の住宅が思い起こさせてくれる。遊びの圏内にあった昔ながらの町工場に飛び散る火花の匂い、醤油やお茶の計り売りの店舗の面影をそのまま残す店。凄いなあ、蕨の街は。
 昔から日本一の人口密度を誇る小さな県南の市だったが、その雑多と古さとところどこに残る空地を渡る風が今もめりはりだらけの空間を作っている。
 水田に浮かべたバラック材料の舟を篠竹で漕ぐ上級生、溺れそうになったどぶ川、砂利道に鈍く光るトロッコの鉄路。そうした戦後の匂いと高度経済成長の背景をまざまざと思い出させる追憶の、そこは街なのだった。
 そして初恋の青春時代、初めての恋人が編んだ白い毛糸のマフラーを、二人の首に巻きつけ、手を繋いで歩いた木枯らしの通学路。16歳の冬をよぎってゆく夕陽のオレンジが、新幹線ひかり号を逸早く作り始めていた日本車輌の、今はなき高い塀の彼方に沈んで消えてゆくのだった。