シュンの日記なページ

当別町スウェーデンヒルズ移住者 ブックレビュー 悪性リンパ腫闘病中 当別オジサンバンドOJB&DUOユニットRIOのVocal&Guitarist ツアーコンダクター 写真 スキー 山 田舎暮らし 薪ストーブ

垣根涼介の幅と奥行き

 垣根涼介『張り込み姫』読了。

 張り込み姫 君たちに明日はない 3

 副題は『君たちに明日はない3』。札幌では図書館から借りて読んでいたシリーズだが、こちらは人口密度が高くて図書館で順番待ちをする気になれないから、ハードカバーを買ってしまう。当然その分金が余計にかかるし、本も山積みになる。困ったものだ。
 このシリーズは、今年になってNHKでドラマ化されたことで、少し有名になったと思う。TVドラマもなかなか面白かった。一話か二話しか見ていないけれど。でも原作がやっぱり面白いのだと思う。
 リストラ請負人を主人公にしたドラマだが、その実、各短篇作品の主人公は、リストラされる側の各種職業人たちだ。早期退職の面接を受けることで、人生や自分を見直す人たちの内側におのずと沸きあがってくるドラマだ。
 そういう必然に眼をつけたところが垣根の凄いところだ。作者の車好きは知る人ぞ知るところだが、自動車整備士を主人公にした一篇では、カキさんという作家がお得意さんとして名前だけだが登場する。そうした遊び心も含めて、垣根涼介の本来のジャンルであるクライム・ノヴェルとは違った地平での肩の凝らないシリーズながら、作家の幅と奥行きの双方を感じさせる作品である。