シュンの日記なページ

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三田の桜 本郷の夜

 仕事で港区内をあちこち歩いた。麻布十番から東麻布への坂を登って、小さな古い坂道である鼠坂を下る。地下鉄で三田に移動し、さらに地下鉄で御成門下車、芝公園の満開の桜に見とれる。
 東京タワーがいつも見える風景の中、桜がどこも満開だが、残念ながら背景の見上げる空は暗い曇り空で、使える写真は結局一枚も撮れなかった。
 夜に、もう一度芝公園を訪れると、ライトアップされた東京タワーを背景に夜桜は満開。シャッターを切るOLたちの姿が目立つ。
 今週はスカイツリーが東京タワーの高さを抜いたのだが、だとしても東京タワーの象徴的美しさは、戦後昭和の歴史に裏打ちされた日本人の心の宝物なのだ、と自らの胸に問いかけて回答を導き出す。

 

 三田線は普段使わないのだが、そのまま水道橋まで乗車して、本郷の台地へ壱岐坂を登る。昔勤めていた会社の移転前のビルのあたりを徘徊したのも、春の暖気に誘われたせいだったかもしれない。
 昔通った居酒屋の若駒がないのでがっかり項垂れる。粋な祭り好きだが無愛想なオヤジで、そのくせ料理だけはたまらなく美味かった。雨の日に追いかけて忘れ物の傘を持ってきてくれたのだが交差点の真ん中で転んでしまい照れ笑いを浮かべていた店のオヤジ。日頃無愛想で一軒コレモノにしか見えない強面だけにその一幕がおかしく、しかもその親切さがとても嬉しかった。二十代の頃の思い出だ。
 結局、兼安を通り過ぎて(「本郷も兼安までが江戸のうち」)、江戸を出たところで、昔入り浸っていたちどりの扉を開ける。昔懐かしのかなり高齢化してしまったお客さんが一名、マスターが一名だけのカウンター。再会を喜び合いビールを傾ける。
 昔の職場仲間を一名呼び出し、やがて合流。彼自身三年目くらいの来店なのだそうだ。
 店のマスターの息子24歳助監督が、最近マスターに生まれてはじめての小遣いをくれたのだそうだ。店の客から40代以上の人40人をエキストラとして集めて撮影したラストシーンの話、テロップに出た息子の名、などの話題を酒の肴に飲んだ。
 その後、旧友のTに連れられ、カラオケスナックで真夜中までSuperflyやレオン・ラッセルなどを歌い楽しく過ごした。そのまま友人の家に世話になる。何もかもが昔のパターン。景色はいろいろな町で変わってしまっても、残るものだけが残る。その残り物を訪ね歩き、自分史を遡行する。そんな思い出めぐりの夜が酔いのうちに更けてゆく。