シュンの日記なページ

当別町スウェーデンヒルズ移住者 ブックレビュー 悪性リンパ腫闘病中 当別オジサンバンドOJB&DUOユニットRIOのVocal&Guitarist ツアーコンダクター 写真 スキー 山 田舎暮らし 薪ストーブ

炎のホッケ

crimewave2010-01-25

 傍らでタラチリの鍋が煮立つのを待ちながら、ホッケを焼く。我が家のコンロは、余計でうざったいことに、ある程度熱がこもると、自動安全弁みたいなものが働いて、網焼きの魚は焼きにくい。せっかくセラミックの石綿みたいなものが網の下に広がる遠赤効果の焼き網なのに、それが災いするみたい。ふん。仕方なく、卓上コンロで焼くと、火力がダイレクトすぎてもうもうと煙が出る。これでは火災報知気が鳴ってスプリンクラーが放水を始めてしまうかもしれないな、との恐怖に駆られ、窓を全開にする。冬の冷気がどっと部屋に雪崩れ込んでくる。逆に煙がぶわっとベランダから夜空に流れ出る。やばい。目の前に消防署があるので駆けつけられても困る。消防車に放水をされてしまったら、スプリンクラーどころじゃなくなる。
 そんな阿呆なことを考えていると、寒さがたまらないということにようやく気づき、諦めて窓を閉め、再度コンロに持ってゆく。コンロの安全弁が利いてまた弱火になってしまう。くそっ。もういいや、火が通っただろうと思ってホッケの身を持ち上げた時に、ホッケに火が燃え移った。おお、消えないぞ。ぼうぼうと燃えているホッケを見ながら、家事の危険よりも、ホッケが焦げませんように! というようなことを、リスクマネジメントよりもずっと食欲優先なぼくは、真剣に願っていた。霧を吹きかけて、火を消し止めた。無事スプリンクラーの放水は免れたらしい。消防車たちの襲撃も。
 でも随分と油の乗ったホッケである。身が厚くて美味しい。これは北海道レベルだな、と一旦捨てた包装紙を眺めると、加工は大洗加工と大書きで偉そうだが、産地はアメリカとなっており、さらによく見るとベーリング海と書いてあるではないか。おお、アリューシャン列島の向こう、北極やアラスカに接するベーリング海からやって来たホッケだったか。どおりで油が乗ってよく燃えるわけだ。
 しかしホッケといえば、札幌では近所の海で獲れるホッケばかりを食べていた。北海道ではどこでもホッケが獲れるから。その単純さに較べると、こんなによくわからない複雑な経路を通ってはるばるイルクーツクたちの海から、シロクマくんの牙を逃れたのに、知らぬうちにさいたまの食卓に乗っているという、ホッケの冒険に満ちた半生があったなんて、全然知らなかった。