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『巡査の休日』、および謎の改題

 

巡査の休日

巡査の休日

 佐々木譲『巡査の休日』読了。矢作俊彦の二村刑事の休日を描いた中編小説『リンゴォ・キッドの休日』を思い浮かべ、道警シリーズの誰か(佐伯刑事あたり)が休日に何らかの事件に出くわすという勝手な思い込みで読み始めたのだが、休日ではなく平日の物語。しかも主役は今回に限っては小島百合刑事。意外な展開に戸惑いつつも、シリーズとしてずっとある一定のレベルをキープしつつ何となく定着してきたシリーズの安定感を感じざるを得ない。
 本書もいきなりの容疑者脱出劇から始まり、同時多発的に展開するあちこちの事件とそれぞれに携わる佐伯、津久井たちお馴染みの面々がそれぞれに『うたう警官』の事件を引きずりつつも、その生き様を変えず、道警という巨大組織との対決姿勢を変えず、信念に基づいた捜査を続ける逞しさは、やはりこのシリーズの読みどころ。

 うたう警官 笑う警官 (ハルキ文庫) 笑う警官 (角川文庫 赤 520-2)

 『うたう警官』がなぜ文庫化に際して『笑う警官』と改題したのかわからないし、マルティン・ベックシリーズのあまりにも著名な警察小説の金字塔といえるタイトルを勝手に拝借されるのは、いかにぼくが佐々木譲のファンであっても癪に障る。さらに映画化されるタイトルも『笑う警官』。あの作品は、ジャズにひっかけた音楽好きの警察官、また道警疑惑に内部告発の形でまさしく証言する(歌う)警察官の話であり、『うたう警官』は絶対的なタイトルと思えたのだったが。
 人気が出ればアホな版元がアホな改題をするのは、今に始まったことではないが、シュバルー&バールーの名作へのリスペクトを残す気持ちがどこかにあってもおかしくないはず。佐々木譲という作家の方にそのあたりのプライドを見せる意地が見せられるか否か今後に密かに期待しているのだけれど。