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29歳の才能『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』

 

 今日は昼前に買い物に出かけ、朝昼兼用のご飯を作って食べた後、しばらくしてカレーを作り始めた。丁寧に玉ねぎをみじん切りにし、眼が痛くなってたまらなくなった頃、鍋に放り込み、煮込む。夕方にはすっかりカレーが出来上がったので、今度は冷ます。一旦冷ますとカレーは美味しくなるのだそうだ。だから二日目のカレーは美味しい。

 ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)

 その間、読んだ本は辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』。なんていうタイトルだろうと、謎だったのだが、とにかくいい小説である。最初はどういう作家なのかわからないだけに戸惑うところもあったのだが、母を殺し逃げている女性を、かつての親友が探す、というハードボイルド構成でありながら、探すというよりも、インタビュー小説のように、現代の女性の総論のようなところの描写が多いのに、ややうんざりしてしまった。
 でも巻半ばくらいから、この物語の持つ奥行き、その手の届かない場所に蹲る深い闇のようなものに気づき始める頃から、逃亡者も、探索者も、揃って自分の中心に過去という錘を抱え込んでいることが明らかになってゆく。
 第二章は逃亡者側の側の視点で描かれており、その中でも印象的な女性が登場する。様々な女性たちの出現により、ヒロイン二人を取り巻く、友人たちの環境、母との正常ならざる関係といったものが浮き彫りにされてゆく。ラストの数ページになると、シーンとしてとても感動的なクライマックスが複数箇所あるので、読者としてのこちらは動揺する。
 作家として知らないばかりでなく、何が書かれようとしているのか想像しにくい小説であるだけに、その動揺は意外に激しい。今さらながら寄贈されていながら、このミス投票に間に合わせなかったわが読書スケジュールが呪わしい。締め切り前に読んでいれば、ランクインさせていただろう。29歳の女性作家という既成概念だけではとても侮れない才能を、容赦なく感じさせられてしまった。