谷川岳一ノ倉沢
パジェロの窓を叩く音がする。おおい、一ノ倉に行くぞ!
はいっ。軍隊の一員のようにぼくは飛び起きる。山の先輩の声に反応する自分の中の若者が反応した姿だ。
西黒沢旧道からはいくらでもルートがある。自転車組はアスファルトの道をゆき、我々は旧道を。高低差があるところでは湯檜曽川の川原を歩く。暴れると厄介なことになる湯檜曽川の周辺の散策路を今日はいくらでも辿れる。
長く暑いごろた石の川原を詰めて行き、人の集まる車道へ。
美しい紅葉に彩られ、あの時期に較べると人気のなくなった魔の岩壁に見とれる。何十年ぶりである。
亡き先輩であるKY氏のレリーフは、一ノ倉沢の見える送電線沿いの尾根から下ろされ、一ノ倉沢出合の少し先の岩壁に埋め込まれていた。二十年位前に尾根に登ったのにレリーフがとうとう見当たらなかったことの謎が解けた。
西黒沢へは林道を通り、宴の跡の撤収にかかる。
帰りがけに、水上で右折し、谷川温泉「湯テルメ」へ。でかい露天風呂と見下ろす清流。なるほどな、と思える温泉だ。何年か前には湯船にどんぐりが降って来たが、今はどんぐりの木が枯れてなくなってしまったらしいのだ。
黎明祭は30年以上も続き、その間に、樹木はどんぐりを落とし、枯れてしまう。人間のこういうちっぽけさを共有できることが山仲間の強みであるのかもしれない。
帰途、関越道は児玉以南が火災で渋滞。延々田園のなかを走り抜け、21時、帰宅。