シュンの日記なページ

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宴の後に

 パソコン通信で冒険小説&ハードボイルドフォーラムというのを永いこと運営してきたのだけれど、インターネットの台頭によりITとして技術レベルが低いパソコン通信は消滅していった。その時代から、画像よりもむしろ文章でしか語れなかったのが、読書系のフォーラムであったのだとは思う。社会的にはIT的に先駆であった人々がコンピュータを通して当時万全ではなかった電話回線を経由してのネットワーキングを楽しんでいた。パソコンもネットも高コストであり、データの転送には眩暈がするほど時間がかかった。チャットはときどき不具合になって、話の途中なのにいろいろな人と生き別れになる。
 そんな中でそうした活動を延々続けてこれたのも、冒険小説とかハードボイルドとか、いわば、電車の吊り皮につかまった人たちの過半数に通勤電車で一様に読まれるような本ではなく、そんな本面白い? とか聞かれそうな、非常にマイナーな分野に孤独な読書生活を送るぼくのような人間には、こうした狭隘なジャンルにこだわる人たちの集まりの中で、本に対する強い愛着というものを共有できたおかげであった。
 そんな歴史はインターネットというとても広漠としたネットの砂漠の上を吹く風に、今やすっかり散乱しているかに見える。だけど、そんな中で少しだけ本への愛情を共有できる人たちの集まりが残存していて、その一つがぼくの運営しているFADV-SNSである。そこに残存している古いメンバーと、新たにやってきた次世代のFADV者がたった三人だけれど、小さな宴を持った。少し前に高田馬場で呑んだメンツは古いメンバーばかりだが、SNSに積極的に関わる人たちではない。でも、今回はSNSの小さな集まりを初めて開いて、そこで、世代を繋ぐような会話を沢山したような気がする。
 もちろんほとんどが本、映画、生活の中でそうしたテーマで共有して語れる仲間が身の回りにいないこと、などなど、昔のパソコン通信時代そのままに、このジャンルの読み手はひっそりとその真情をカムフラージュしながら、ゲリラ的日々を棲息している。
 初のゲストのmucchanにマンシェットの『地下組織ナーダ』を渡す。これを貸すのは二度目である。ずっと昔に、マンシェットの小説を訪ね歩いて、ぼくのサイトに行き当たったmuchhanにこの本を、遠い札幌の地から送ったのがきっかけであったと思う。そういう若いマンシェット・ファンなどの到着をずっと待ち受ける門のような機能は、ずっと存続してゆきたいと思う。それが、fadvという厄介な情念のかたまりみたいな怪物を10年以上も抱えてきた者の役割なのではないか、とこの世の果ての本当の袋小路の終点みたいな場所で思う一つの主題だ。

 

 今日、古きよき時代をディテールまで思い出させてくれた柿さん、将来が決して捨てたものではないと思わせてくれたmucchanさん、本当に有難うございました。