わが青春の蔵王
朝から露天風呂に浸かる。深い緑の山の上。懐かしき蔵王温泉。
二十代の頃、毎年ここに通い、スキー技術の習得に明け暮れた。かかとを固定しない山スキーの前傾姿勢は難しい。山形山岳会に頼んで、山小舎を借りて合宿を行った。都内にある私立女子大の山岳部や、地元山形大のスキー部などとの共同合宿となり、同じ料理を作り、ストーブを囲んで酒盛りをした。
人数の揃わない日には山小舎の鍵を一旦返し、下の民家に頼んで空地にテントを張らせてもらった。雪上キャンプの日々。水を頂きに行った先のホテルでは、管理人たちが展望風呂の使用を無償で提案してくれた。ありがたく、一人一人が、汚れ、冷え切った体を熱い湯に浸した。山形の人たちの人情にじんと来た感覚を忘れることはできない。
そんな蔵王温泉、ホテルの館長は山形新聞で、昨日の試合、レッズサポの大挙襲来の記事を示してくれた。訛りの向うに見える親切が有難い。皆は盛り上がった。
格安の価格で提供されたホテルの一日。極上の風呂。極上の朝食、すべてが料金からすると身に余るもてなしである。その辺りのビジネスホテルより低い料金なのである。とても信じられない。
チェックアウトを済ませ、ロープウェイで地蔵岳山頂駅に向った。終点では涼しい風が吹いている。頂上まで10分だと促して、全員で頂に遊んだ。周遊し、くつろぎ、風を嗅ぎ、花たちを見つけ、微笑んだ。
↑ あの山を越えるとお釜なのだが。
サッカーと、温泉と、山上の散策。山形には是非来期もJ1に残って欲しい、また来たい、そんな言葉ばかりがみんなの中で飛び交った。
ロープウェイから、昔、滑ったゲレンデが見える。昔、恐怖にすくんだ横倉の壁が見える。モンスターのはざまを縫って滑り、さらには晴天の下で憩った樹氷原からユートピアゲレンデに繋がる広大な高地が見える。滑り込んだ山スキーの静謐なるコースへの飛び込み口が見える。雪洞で皆で食べた納豆ご飯の味がよみがえる。みんなの若かった頃の笑顔も。 青春のページの数々がこめられた場所。15年ぶりくらいになるわが聖地。
さらば、蔵王。