ロング&ショート・ストーリーズ
蟹を茹でたり食べたりしている間に、書き忘れてしまったのだけれど、村上春樹『1Q84』を読了。いつものように不思議ワールドなんだけれど、それでもハードボイルドの要素やラブストーリーとしていつになく純愛であったり、おまけにこの作家がこだわってインタビューした『アンダーグラウンド』に通じるようなカルトの恐怖など、いろいろなエッセンスが、けっこうごった煮になっており、やっぱり日本発世界向けの娯楽小説なのかなあ、と不思議に思った。
とにかく長い小説である。いつにもましてディテールが描かれているのだけれど、それがいつになく嫌味じゃない。けっこうナイーブな男女の不可思議な日常を丁寧に描いている感じがあって、高感度が持てる分だけ、村上春樹的ではないような感じがする。それとも作者も歳を取って丸くなったとか。緑色の月のように(と変な表現をしておくのは、これから読む人たちの楽しみのために)。
その後、短い小説がいいなあ、と通勤電車に持ち込んでいるのが大沢在昌の短編集『鏡の顔』。装丁がよく、隠さないで堂々と読めるのが嬉しい。海外小説のような洒落たカバーだ。『新宿鮫』シリーズから一編のとても短い作品で始まるのだが、これは珍しい。この後、佐久間公やジョーカーなども出てくるらしい。大沢ファンにはちょっとしたおやつみたいな一冊かも。