シュンの日記なページ

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13年の昔、ふたたび

 今月の帰省では、札幌の床屋に予約が取れなかったので、髪が伸びて限界となり、どこかに切りに行かねばならなくなった。
 近所の床屋をネットで検索するが、ネットに情報を載せているような床屋はなかなかない。あっても、美容室であったり、高額料金であったり、と、どうもフィットしない。
 迷いに迷った挙句、昔済んでいた県北部の町の、昔行っていた床屋に出かけることにした。車で30分以上かかるが、それでも懐かしい町だ。息子が生まれたとき、離乳食や紙おむつを買ったスーパーを横目に、やたら懐かしくなる。小さかった我が子のいたいけな表情が思い出され、じーんとなる。
 雨の中、床屋の玄関をくぐると、白のラブラドル・レトリバーがソファに寝転んでいて、ぼくは頭を撫でてやる。すると、昔はまだ二十代だった娘さんが、すぐに出てきた。きっとわからなかっただろう。13年ぶりです、と言って席に着いた。髪をいじりながら、彼女は、あ、髪型変わってないですよね、と思い出したようである。
 黒のワンちゃんだったよね。ちょうどこの子を産んでから死んじゃったんです。ああ、黒い犬から真っ白な犬が生まれるんだね。この犬種はそうなんだそうです。
 外は雨。北海道に行っていた13年間。北海道に行ったことがないというので、いろいろ話をする。
 小さな子の声がする。私もだいぶ遅くなって子供を授かったんです。今、幼稚園の男の子。
 奥から、年輩の女性。見覚えがある。お母さん、昔来ていたお客さんなんだって。お母さんが鏡を覗き込む。
 頭皮マッサージから始まって首、肩と続く。ああ、ここはマッサージをとっても長くやってくれるんだった。思い出した。凝ってますねえと言いつつ、サービスします、といっぱい腕に力を溜めて圧してくれるのだった。今も変わっていないので、笑ってしまう。
 父は去年亡くなったんです。お父さんとお母さんがいつもいて、娘は婿さんを取ったのだろう、奥で子供の相手をする明るい男性の声がする。床屋を手伝っていないから普通の勤め人なのかな。髪結の亭主、なんて言葉にはずっと憧れたものだけれどな。
 古い季節から立ち昇るような二時間を過ごして、雨の上がった黄昏時に店を出る。雨の匂いがまだ空気に残っていて、緑の木々がやたら瑞々しい。
 懐かしすぎる街だ。通っていた図書館に立ち寄ってみた。札幌や浦和だったら20人待ちくらいになるだろうミステリ小説が、平気で借り出されずに置いてある田舎の書棚だ。小さな市である。13年前の時間が甦る。子供が小さく、ぼくも妻もあまりに若かった、切ないほどに昔の時間が。