シュンの日記なページ

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朝を、救急外来で

 そう、たまには、朝を救急外来で迎えるのもいいかもしれない。
 その代わり、家を出てすぐ、自転車のタイヤを段差に取られて、頭から歩道に倒れこんだ痛さなんて珍しいものを経験しないで済むなら、それに越したことはないだろう。
 慌てて家に駆け込んで、膨れ上がった前額左側面のお餅のような瘤に度肝を抜かれずに済むのならなおいいだろう。左手首や指の付け根なぞも切り傷擦り傷で、左頬っぺたが擦過傷でまっ赤っ赤、しかもたまらない痛みなんていうのがなければなおいいだろうねえ。
 でもそういういろいろな悲劇がついているからこそ救急外来に堂々と入ってゆく権利が生まれるのであり、それはまぎれもなくさいたま市立病院、駐車場にパジェロを乗りつけると、世界は桜並木のピンクにかたどられた幸せな風景であるのだった。
 熱ピタシートを頭に貼って、その間から血を垂らして、ワイシャツの左手首も手首の傷の血で汚して、スーツの左肩には泥をつけたままの姿で、そうした美しい朝を見るのでなければ、もっと良かっただろう。
 ベッドに寝て、地下の放射線室を往復して、朝の儀式、ベテラン先生が若手先生にぼくを実験台にして、意識レベルの検査を教えている。ぼくは実はこの手のことには詳しい。救急部の医師との仕事が多かったので、意識レベルのスケールに関しては、今日ぼくのヒアリングをした先生よりはずっと知っている。でも患者としてここに迎えられたからにはそうしたもろもろのことを我慢しなければならない。
 家に戻り、傷を水で洗い、熱冷ましーと(さっきと製品名が変わっているいい加減さ)を切って貼り、その上からテーピング。平日の時間は貴重なので、チャンスとばかりに近所の郵便局で郵貯銀行の口座を作り、ネットバンクも申し込んできた。何だと思うだろうなあ、頭テーピング、頬擦過傷、のぎょっとなるような顔の人なので。
 そのまま会社に出かけ、午後から夜の9時近くまで仕事をする。期末期初という時期なので地獄のように忙しいのだ。今月の残業はもう既に20時間になろうとしているんだから。もちろん残業代は出ない。
 夜には、同じ傷だらけの姿で、駅前の庄屋に入って、ビールを飲み、ホッケを突いてから、帰った。最初は、21時間営業のマルエツに入ったのだけれど、いかにも作るのが面倒くさい。一旦取ったカゴを元に戻して、外に出る。頭が四六時中ずきずきするのだ。自分で作ったり洗い物なんてしたくない。
 そう、歯痛を思い浮かべてもらうといいと思う。あれだ、まさに。同じなのだ。脳に近い部位はそもそも痛いという。まさにその通り。なのでアルコールでぼんやりさせて家に帰る。やっぱり痛いけれど。
 息子からメールが来ていた。札幌の高校生は明日が入学式なんだそうだ。いいなあ。父親としては出席したいなあ。息子の真面目な姿もたまには見てみたいなあ。
 友人が札幌に高校生の息子を残して家族で東京に転勤になったとき、そういう式典にだけは父親なのにわざわざ飛行機で札幌に来ていた。そうすべきなのだろうとの思いもあるのに、こちらは傷だらけで東京を往復している始末だ。
 こういう生活って本当に正しいの? 何のために働いているの? 家族と一緒にいるためではないの? と、言いたいけれど、喰っていかなきゃいけないんだ。東京に仕事が沢山集中しているのだ。人数がコチラに欲しい会社の気持ちというものもわからないではない年齢である。だから諦めて働く。
 以上、よく出稼ぎ以上に割が合わない、と感じている単身赴任者の愚痴でありました。