昔の、想い出の町
埼スタには、主に埼玉高速鉄道で出かけたことしかなかった。札幌からの出張で、東京に泊まり、本来は札幌行きの飛行機に乗るべきなのに、そのまま北に向かい、王子から地下に潜り、知らないうちに県境である荒川を越え、埼スタに辿り着いてしまうのだった。
ところが今は浦和区の住民である。
いろいろ支払いとか、掃除とか、バスカードを買いに出たり、とか、忙しい朝を過ごしているうちに、時間が迫る。
JRで南浦和に出て、武蔵野線乗り換え。今朝から京葉線は風で止まっており、武蔵野線は西船橋からピストンしている、などと難しいアナウンスをしているのだった。凄い暴風雨なんだな、と感心する。北海道は暴風雪なんだろうなあ、きっと。
東川口への武蔵野線の車窓からの景色を見る。30代の頃、結婚したてのぼくら夫婦は東川口にしばらく住んでいたのだ。この車窓の風景もほとんど変わっていないな、と思う。東浦和のあたりで桜の花が雨の中だというのに綺麗にほころんでいるのを見つけ、ああ、北海道ではすべての花が5月にならないと開かないというのに、と落差に愕然とする。
東川口のホームに降り立つ。ずっと住んでいた町。あの頃人っ気のあまりなかったこのホームに、レッズサポの装いが凄い活気をもたらしている。不思議だ。
ここからは初めて埼玉高速鉄道にもぐりこんだ。傘も持ってきていないので、少し雨に濡れながらバスを待つ。バスを待つというよりも、バスは沢山いるので、それに乗り込む長蛇の列が短くなってゆくのを待つというほうが正しいか。
バスの窓から、新しい団地の窓からレッズフラッグが下がっているのを見て、微笑んでしまう。アイポッドからがマーク・ノップラーとエミルー・ハリスの歌うカントリーが鳴っていて、雨にくすむ赤い旗が、ぼくには何とも感傷的、かつ心温まる景色として感じられるのだった。
レッズは、ホームで勝った。異様なほどに周りが歓んでいるのだが、8月以来のホーム勝利なのだそうだ。タオルマフラーを出して、We Are Daiamondsを歌うのも、久々なのだそうだ。なるほど。
一旦家に帰ってから、近所の友人と、与野駅前のちょっと変わった焼き鳥屋で祝杯を挙げることにした。まだ外には風が残る。帰りのチャリでは、少しからだが冷えてしまった。家に帰って、今日も寝床に倒れ込む。明日は、朝寝するのだ!