国境を越えてカシマ・スタジアムへ
朝6時に30分も遅刻して、道の駅安行へ。
昔、新婚の頃に済んでいた東川口の、家族向けアパートが道路の隙間から見える。あの頃の若さを思うと、想い出に胸が沸騰しそうな気分だ。
さらに見知らぬ道路が延びてゆき、夢で何度も見たゴミ処理工場への道路を分ける。昔の、ここでの暮らしの想い出に窒息するかと思う。
道の駅、安行でアレスの一行と合流。すぐに高速に乗る。荒川に沿って浦安へ向う。懐かしいルート。毎日のように走った路面。あの頃の若さ、バブルの頃の世界的気楽さが、時の向うに既に終っているのだ。想い出がまたも沸騰する。
カシマへのアウェイ遠征は、鹿嶋の国への国境越えなのだそうだ。鹿嶋は独立国なのだそうだ。レッズサポは一様にそう言うのだそうだ。
金がない頃、ワールドカップ前の小さかったカシマ・スタジアムへは、高速を避けて、筑波山麓の南側を通り、霞ヶ浦へ南下した。霞ヶ浦を越えて鹿島神宮に入ると、鹿嶋の町へは一投足だったが、ワールドカップの改修後、カシマは随分変わった。
その新しいカシマの国へは8:30くらいに着いた。およそ二時間の旅。なぜこんなに早く着かねばならないのか。先発隊がいて席は確保できる段取りになっているのに。
それは帰りの車輌渋滞を予測してのことである。ある駐車場にある角度で車を入れ、あるルートを走ることによって早くカシマの国から出国できるのだそうである。ふうむ。だが、眠いぞ。
並びの場所にシート張りを終えると、ぼくはパジェロにすぐに取って返した。もちろん降るバックシートをフル・フラットにして、足りない眠りを貪るためである。
しかし本当にカシマの国は、外国みたいである。国境を思わせる試合日専用の駅には、朝早い時間とあってゲートが設けられ、絶対に入れないようになっていた。よく見ると電車がいるのに。単線ですれ違えないから、この無人で閉鎖された駅を使って、待ち合わせをしているのかな?
フェンスの向うのカシマ・スタジアム。パスポートなしで国境を越えてきてしまった。密入国になるのかもしれない。そう言えばチケットは、カシマ国民に成り済まして確保したものであるように聞いている。
ちなみに、帰りも2時間で帰ってしまった。これは密出国ルートを知悉する同乗者がいたためである。というわけで、拿捕されたり収監されたりすることもなく、無事さいたまの国に帰国してきたのである。