シュンの日記なページ

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時化の海へ

 苫小牧東港には、身を切るように冷たい風が横殴りに吹きつけている。乗船手続きをすると1時間もの余裕があった。もっとゆっくり札幌を発つべきだったか、との後悔の念がよぎる。
 最後にマルちゃんのインスタント・ラーメン、屋台十八番を買い出して一度戻る、妻にそう告げ、息子を車に乗せ塾に送る。息子の帰宅時刻には間に合わないから、このまま父ちゃんは出発するぞ、でも月に一度は帰ってくる。受験は心配だが、受けるのはお前なんだから、父ちゃんがいなくても頑張れよ、そう言い残して、息子を見送った。
 息子は小さい頃、ぼくをお父さんと呼び、小学校三年頃から父ちゃんと呼ぶようになった。今では父さんと呼ぶ。『北の国から』みたいに。北海道の標準なのかな、と思う。パパと呼ばれなくて幸いだった。
 その息子との別れの痛みを心にずしりと重たく抱いたまま、家に戻り、今度は妻に、出かけると告げる。いつも見送りもしない妻が、今日ばかりは、玄関先まで一緒に出てくる。
 肥らないでよね。
 それが見送りのセリフかよ。そう、思いながら、ああ、と答え、扉を閉めた。
 苫小牧埠頭に駐まる車が既に横風に揺れている。
 乗船すると、早速、今日は時化るので、明日の到着時刻は遅れるかもしれない、とのアナウンスだった。船はゆっくりと港を離れる。船はじきにぎしぎしと言い出す。
 揺れ始めた。