凍てつく街

　サッポロビール園に何年ぶりかで出かける。はっきり言って肉のタレが甘っぽくまずい。こんなだっけか？　との印象。自分にとっては想い出のビール園。札幌にきた頃ろくすっぽ店を知らないので、妻子が帰省している間など、一人でジンギスカン食べ放題ノミホ付きというのを、大ホールで何度かやったものだ。値段も料もリーズナブルであった。でも４０台になりたてのその頃は、あまりジンギスカンの味にこだわりもなかったのだと思う。

　今ではキリンビール園のほうが、タレも二種類あるし、生ジンギスカンへのこだわりもあったりして、格段に美味しい。それ以上に、だるま、綿羊亭、札幌ジンギスカン倶楽部、ヤマダモンゴルなど、あっさりタレにジューシーでフレッシュな国産羊肉が席巻しており、サッポロビール園の味は廃れてしまったのだと思う。かつてビール工場だった跡地も、アリオというマンモス・ショッピング・モールができてしまい、ＪＲ線路際に拡がっていたこの土地には、もはや味も素っ気もなくなった。

　帰途、麻生のスナックに立ち寄る。かつてここでワイルドワンズのチャッピーや、カーナビーツやクリエーションのメイン・ボーカルだった故アイ高野と音楽談義やプロ・アマ・デュエットのカラオケで楽しくも痛飲した、あまりにも濃い想い出の店だ。ママが空っぽのジャックＤのボトルを示し、オールドパーでいい？　と言いつつ酒をただで出してくれる。こそっとお別れの餞別、と耳打ちされる。泣ける。

　三年後くらいに帰ってくると思うよ。そう言って、店を後にした。季節外れの大雨に見舞われた札幌は、真夜中を過ぎて気温が下がり、一気にすべてを凍らせようとしていた。