シュンの日記なページ

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親子をテーマにした小説たち

 母の担当ケアマネから朝一で電話が入る。介護度が4に上がったそうで……そうだろうなあ、認知症がどんどん進行しているからなあ、と思う。まずはショート・ステイ先が以前のところに変更になり、その後ベッドの空きを待って正式に入所する。今年は、たびたび母のところへも行けるようになると思う。
 ぼくの両親は子不幸だと親戚その他に言われたが、そんなことはない。愛情だけは十分に注いでもらった。後年は親と子の間にだいぶ距離ができたと言わざるを得ないが、少年時代を支えてくれたのは、両親の失敗した結婚生活がもたらす赤裸々な日々に対し、ぐれずにタフに生きてゆこうという思いだった。そんな中であれ、父母からは、ぼくに対する無償の愛がいつも感じ取れて、そのことがとても不思議だった。
 親の子に対する身勝手で一方的な愛は、ときには邪魔臭くもあったけれど、それがずっと継続されていることには驚異を感じていた。そんな親の愛にぼくはずっと、親が生きている限り、甘えてもきた。
 親が子に与えてくれた十分な愛情を、ぼくは父にも母にも返してあげられていない。一生かかっても返せない。そうした愛情は、ぼくは我が子に振り替えて注いでいるのだと思う。我が子には、だからそのお返しも期待できないのだ。我が子は、またその子に愛情をバトンタッチしてゆくだろうから。

 浅田次郎『中原の虹 第二巻』読了。

 中原の虹 第二巻

 この時代、親が子を、平気で殺していたのだなあ。満蒙の現代史。西太后も、馬賊ヌルハチたちも、我が子を殺し、四億の国を統べる。一体どういう価値観が歴史を動かすのだろう。この巻だけでも、親が子を殺さねばならない場面が、執拗に様々な形で描かれてゆく。世界の冷厳さを訥訥と描いた本でもある。

 ちなみに親子小説の代表作と言ってもいい『ザ・ロード』(コーマック・マッカーシー)では、世界の人間がほとんど死に絶え、親子一組だけが無人の凍土を旅してゆく。そんな中での親子関係と、四億の人間の渦巻く戦火の大陸での親子関係とでは、これほど大きく人間の距離は違ってしまうということなのか。

 ザ・ロード

 ともあれ、『中原の虹』第二巻では西太后の死までがドラマチックに描かれる。世界の揺動を存分に感じさせるダイナミックな一冊である。

 ここで一旦、この大河小説を置いて、図書館で仕入れてきた本に切り替えねばならないのが少し辛い。いっぺんに複数の本を読むのは、あまり性に合わないのだが、二週間という期限があるのでどうしようもない。