シュンの日記なページ

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湿った12月の雪の街

 随分ひさしぶりにすすきののスナックへ行った。だいぶ前のつけの分の請求書が来ていたのだ。年末だものなあ。でも、ぼくは故意につけをしたわけではない。カードリーダーの調子が悪くて、クレジットカードを認識できなかった店の側が、「後でいいよ」という悪魔の言葉を囁いたのだ。
 でも、こういう機会を強制的にもらい、店のカウンターに座り、飲み放題メニューを示すマスターに首を振って、一向に減らずにいたカティサークのボトルを久々に抱き寄せた。
 カウンターにはしばらくマスターと、ぼくと、女の子二人だけという、いわば貸切状態だったのだが、やがて典型的な独裁者的酔っ払い現る! どう見ても普通とは違うだろう人格になり、むちゃくちゃ粗暴なのだが、見た目は白髪横分け、眼鏡、顎の骨貧弱という、「愛と誠」の岩清水君風な(古い!)インテリ族の風貌。そんな暴言ばかり吐いていると、場所を間違えれば殴られるぞ、と心配になるような存在。
 その後、若い一団が現る! 早速カラオケの曲を入れるのだが、お定まりの長渕、しかも物真似だ、あーあ。マスター、感情を頼む!

 すすきのは閑古鳥が啼いているのだそうだ。そう言えば、大きなキャバレーを運営していたどこそこっていう会社が長年の歴史に幕を閉じたと言うニュースがつい先だって飛び込んできたばかりだ。その前にはロビンソン・デパート撤退のニュース。タクシーの群れが客よりもずっと沢山、道路に肩を並べて、無人の闇夜を見据えている。

 小ぬか雨のような雪(もっとしっかり降れよな、12月の雪よ!)を潜り抜ける。
 大通り公園には、少し不足気味の雪を照射するホワイト・イルミネーションが皮肉かなにかのように色鮮やかだ。
 昔、わが夫婦が若き恋人同士だった頃、ここを手を繋いで歩いたのだった。ホワイト・イルミネーションに瞳を輝かせて。白い息を纏いつかせて。そんな日は、もう20年以上も昔のことだ。でも、まだホワイト・イルミネーションはまだ今日もここにある。あの頃はもっともっと雪が深かったけれど。すすきのはきらびやかだったけれど。雪はまっさらで、深々と、足にやわらかかったけれど。

 タクシーの運転手と、景気の話をするのが好きだ。彼らは実に生々しいほどに情勢に的確なのだ。わが一流大学出の上司たち、トイレで自分のちんぽこを掴んだ後、手も洗わないで食卓に向うような下品な←12/9日記参照上司たちたちよりも、ずっと。
 このタクシー会社では、冬のボーナス半減と発表されたばかりだそうである。その上、来年から歩合の取分を下げられることまでが発表され、会社側と組合とが現在交渉真っ只中なのだそうだ。おかげで、12/15に支払われるはずのボーナスは先延ばしになりそうだ、と運転手は嘆く。私たちは生活するだけでせいいっぱいなのに、会社はそれ以上下げようとする。自動車の台数分の運転手が必要なのでリストラはしないのだろうが、組合としても今度ばかりは真剣なんです。運転手は嘆く。
 そんな話を聴きながら、針葉樹に降り積もった雪とともに、今にも凍りゆこうとしている真夜中の木々にぼくは酔いに身を任せることもできず、ただただ眼を眇めているのだった。