シュンの日記なページ

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新しい都市、古い想い出

crimewave2008-07-11

 早朝出発の上京。あまりクロス読書はやらないのだが、読みかけのディーヴァー『ウォッチメイカー』が弁当箱サイズで重く嵩張るため、文庫で持ってきたエルモア・レナードの『ホット・キッド』を機内とモノレールで読み続ける。1920年代、禁酒法時代の警官と犯罪者の長い物語。似たような小説をクロス読書すると、頭の中でシーンが交錯してしまうことがあるのだが、あまりにタッチの違う小説なので、この二冊の場合、問題はあるまい。ぼくは、よくCSIのベガス篇とニューヨーク篇とマイアミ篇のどれもが、少しずつ交錯してしまい、続いていたストーリーが、おかしくなってしまうことがあるのだ。
 昼と夜の凄まじい仕事から解放され、東京を抜け出し、さいたま新都心のホテルにチェックインしたのが、最早や23時過ぎ。そこから、独りの、自分のための時間、自分のための一杯をやりに、駅に戻る。カタクラパークの中華屋に入り、生ビールを呑みながら、料理をつついた。カタクラパークは、昔、繊維工場の広い敷地だったところで、オイルショック前の古い時代に、父はそこの工場で働いていた。ぼくは、父に連れられて繊維会社の運動会に行ったことがある。学校の運動会よりもずっとずっと大規模で、明るい運動会だった。健康的なお姉さんたちがトラックをぶんぶん走っていた元気な姿、彼女たちをからかい、笑いあう父の自信ありげな表情を、思い出す。
 その後、父は九州への転勤を命じられ、会社を辞めたが、あの会社にずっといられれば、我が家はもっと金銭的な余裕があり、両親が離婚することもなかったのかもしれない。
 別の人生を思い描きながら、口についたビールの泡を拭い取り、ホテルの部屋に戻る。無機質な高層ビルに囲まれた駅からの道は、暗闇の中であるにも関わらず、女性の独り歩きもあって、治安という意味で、奇妙な感じがする。
 昔はこのあたりは国鉄の操車場だったはずだ。
 今、ホテルの窓からは、ハイテクビルに彩られた夜景が見える。父の過去も、ぼくの想い出も、窓辺に滲む光りの眩さの向うに隠れて、最早、どこにも見出だすことができない。