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30年後の犬神家

crimewave2008-07-01

 スケキヨ、と言えば、湖の逆さ死体が流行ったものだった。当時ぼくは学生で、大学最寄の駅前のシネマで、角川映画のほとんどを観たのだった。『犬神家の一族』は、なかでも大ヒットした作品で、市川崑という監督はあまり知らなかったものの、巧いな、職人だなとの印象が強かった。
 横溝正史に関しては、夏休みなどプラスティック整形工場の深夜番で12時間労働のアルバイトをしていた頃、一分おきに機械から製品を取り出す10秒間以外は、50秒ずつ空白の暇が訪れる拷問的単純労働だったので、毎日一冊ずつ、持ち込んで、朝が来る頃ちょうど一冊読み終えていた。金田一シリーズは、そこそこ面白いし、暇に飽かせて拷問的単純作業の中で読むには最高のシリーズだった。
 その映画化は、深夜の50秒おきに読んだ作品よりはずっと良かったと思う。音楽は大野雄二で、当時引っ張りだこの映画音楽の旗手であった。
 今日見たリメイク版のよくわからないのは、当時のキャストの一部(高齢化が激しい)、監督や音楽はそのままで、という意味である。30年も経てば客層が変わるという営業上の理由はともかく、30年前にあの映画を見てしまった身にはやはりリメイクは辛いぜ、と思えてしまうぼくのような人間もいるのである。あの頃の、『犬神毛の一族』『獄門島』『悪魔の手毬唄』という三部作はとっても良かった。中でも『悪魔……』の岸恵子は忘れられない。
 今回は、強いて言えば見所は富司純子の美しさであろうか。時代と和装がとても似合うところは、貫禄十分である。市川崑の美学が伺えるカメラワークだったと言えようか。
 でも作品としてはペケである。当時の角川映画ブームを支えたあの絢爛さは最早、どこにもない。