短篇の重さ

　誉田哲也を久々に買ったのは姫川玲子シリーズ新作ということだったからなのだが、この『シンメトリー』、実は連作短編集だった。本にも帯にもそのことがどこにも書いていないのがずるいっ、って思ったが、このずるい出版社はっ光文社です。文芸春秋や新潮社や講談社であれば、あまりやらない手口だよな、というのは偏見ですか？

　

　でも内容は長編以上にけっこう詰まっていて重たい。こんな重みのある行間を書けるんだ、とさらに誉田哲也の力量に酔う。香納諒一も短篇が重たく、小粋であり、それは長篇ではなかなか発揮しきれない部類の特異な才能のように思える。
　読みかけのオットー・ペンズラーの『アメリカン・ミステリ』も、無名の作家が多いわりには中身がずしりと重い。さすがに厳選された短編集だ、と思う。
　これはもしや思いのほかの収穫かも、と思わず本を抱きしめてしまうのであった。姫川玲子、いいです。