シュンの日記なページ

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映画の鬼

 NHKのBSデジタル3という、非常に限られた人しか見ないであろうチャンネルで、今日、脚本家・橋本忍の特集番組をやっており、80代後半に差し掛かった老脚本家が、インタビューに答え、映画製作の裏話を語っていた。黒澤明監督と丁々発止の駆け引きの末に生まれた『七人の侍』の裏に、日本の潰れた脚本と原案があったことなど、圧巻の制作秘話だった。六ヶ月旅館にこもって三人の男が脚本を仕上げ、黒澤すら過労に倒れたという。それほどまで打ち込まなければあの映画はなかった、と言う。黒澤の鬼のように激昂する短気ぶりも怖いが、人間の裏を読み取ろうとする橋本忍の執念も凄い。
 黒澤一門の脚本チーム筆頭のような橋本忍は、その後、野村芳太郎を脚本家に迎えて『砂の器』の製作に取り掛かる。さらには森谷司郎監督とのコンビで『八甲田山』と、ぼくが銀幕で見た凄まじい映画の数々をものにしていったのだ。

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 松本清張作品の映画化脚本をだいぶやっているが、岡本喜八(『日本の一番長い日』)山本薩夫(『白い巨塔』)など、癖のある監督とのコンビもやっていたのだと、今さらながら、この脚本家の映画史に残した足跡の数々に呆れる。

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 今、こうした映画が映画であった時代を振り返り、こうした脚本家の後を継ぐ人がどれくらいいるのだろうか。日本映画の興行収入がそこそこ膨らみつつある現在でも、六ヶ月間旅館に篭ったり資料漁りに明け暮れたりする丁寧な映画作りができるのだろうか。『砂の器』のように四季の映像を収集するだけの、長い製作時間が許されているのだろうか。
 これ以上ないほどに贅沢なものとは、製作にかける時間の有無じゃないだろうか。映画も小説も含めて、である。