札幌ワンダーランド
ネット麻雀の虜になってしまい、読書進捗の方がやばいぞ、と深刻に思い悩み始めたため、心を鬼にして読書時間を作る。東直己『探偵、暁に走る』読了。
探偵、暁に走る (ハヤカワ・ミステリワールド)asin:4152088710
ススキノ探偵シリーズとしては、久々の読み応えを感じさせ、材料もわざとらしさがなく、自然に流れるように気持ちよく描かれたミステリーであり、さらに東直己真骨頂である様々なこだわりが見えるので、ストーリー以外の凝り性ぶりなどが味わえる。
そういう気になる部分を読後ネットで調べてみた。主人公「俺」が学生時代聴いていたのがサード・イヤー・バンド。実在するのかどうか調べたところ見事に紹介されているページがあった。
もう一つ、ヤクザの親分・桐原と「俺」が飲み交わす酒、しかも「俺」が心底美味いなと感じる酒アードベックとはどんなものなのか。モルト好きなのはわかっているが、換気装置のないところで蒸留されビートの煙の匂いが沁みついたモルト・ウィスキー、というようなことを紹介してくれるページがあった。
気の合う友達の葬儀は無宗教で行われるが、バックにはグレン・グールド、ロン・カーターがかかる。クラシックとしてはややポップなファンの多いピアンストと、ジャズにしてはスタンダードから外れたフュージョン系であるベイシストである。
さらに写真画像関係に詳しい仲間というか手下みたいな存在の若手が小別沢で山小舎に住んでいるのだが、小別沢とは札幌でも有名な心霊スポットであるトンネルのあるところだ。地図で検索するとしっかり実在することがわかる。
危険でスリリングな場所として描かれる生振は「おいふる」と呼ばれる場所だが、ぼくのよく行く石狩図書館近所の茨戸川の対岸にある未開地みたいな場所である。札幌の北西辺から石狩の方に市境をまたぐと、ダート道路で刻まれた産廃違法廃棄場がたっぷりとある。死体がいくつ埋められてたってわかりっこない。
大通り公園のテレビ塔下のステージ前ベンチっていうのが、待ち合わせして密談するのにいい場所であるとは知らなかった。
大通り駅から書店をくぐると、地上に出る方法が三通りあって、尾行を巻くのに最適だなんていうことも知らなかった。
豊平橋手前の立ちんぼスポットは実在するが、そこに美味しいラーメン屋も実在するなら一度出かけてみたい。
中郷通り商店街も北斗通り商店街も、実在はしないようだが、モデルはあるのかもしれない。札幌の商店街のページにそれらしきものを探そうと思ったがあまりに多いのでやめた。どれも小さな商店街であるに違いない。