少しだけ三島由紀夫
『錏娥哢奼』をなかなか読み終えられないのは、正直に告白しますと、はい、ネット麻雀に入り浸っているせいです。駄目な俺、です。
告白と言えば『仮面の告白』で有名な三島由紀夫のことについて、ここ一ヶ月で二人の人と話をしている。三島は、ホモセクシュアルのマイノリティとして語られることが多いが、実は男女間の正当なる恋愛について書く小説の美しさには眼を瞠るものがある、という15歳くらい年上の方のご意見を聴き、そう言えば『午後の曳航』とか『潮騒』とか『美徳のよろめき』とか、それぞれに恋愛小説が今も、忘れ難いほどに印象深い。なみいる純文学作家の中では、図抜けて面白い部類に入る作家であった。『豊饒の海』全巻と『金閣寺』は、とりわけ強烈に印象深い。『仮面の告白』は、高校生時代にはよくわからなかった。
『豊饒の海』と言えば輪廻転生をテーマにした生まれ変わり小説サーガなのだけれども、そうしたことと三島の自決との関係についてはさぞかしいくつもの論文が書かれているのだろう、と思われる。よく同性愛などのマイノリティは、子孫を残せないために進化の袋小路などと呼ばれるけれども、そうした閉塞感に対しての転生の美学などというのもあったのかしらん。三島が死んだ日からスタートする花村萬月の『青の時代』シリーズを考えると、萬月氏と同世代でもあるぼくらの時代は、三島を生きていた人としてよりも自決した作家として、死後に出会ったという人が多いのかもしれない。