シュンの日記なページ

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校庭を通ってくる音

 雪が降っている日に、会社を休んで布団の中で寝込んで過ごす。戸外は静かだが、ときどき音楽が流れてきたりする。小学校の校内放送だ。かつて息子が通っていた小学校は、我が家のすぐ裏側に校庭が広がっているので、そこを子供たちの声や校内放送が突き抜ける。

 クローズド・ノート クローズド・ノート

 昼の光が窓から差し込むうちは、電灯に頼らず本を読むことができる。今日は、この小学校の女性教師のノートを中心とした小説を読みながら、小学校の放送を耳にし、そうして自分の小学生時代、息子の小学生時代、随分前に死んだ弟の小学生時代などなどに思いをめぐらせていた。また、当時のいろいろな先生の貌を思い出したりもした。

 読み終わって、この本を閉じることがなかなかできなかった。作者の、亡くなった実姉のノートがこの小説の題材になっているとは、後記にて知る。さらにこうした女性が実在した、そうした女性教師が大好きだった子供たちが存在したという事実に、純粋に心揺すられる小説である。よくもまあここまで人の心を打つ小説を作ることができるものだ。

 これはミステリ作家が、ミステリとは無縁の純粋な恋愛小説によって人を感動させてしまう実例である。もはやエンターテインメントは、ジャンルなどで切り分けるべきではないのだろう。謎を追いかける楽しみはミステリでなくても、人の心の中に十分に発見することができるのだから。この歳になって、恋愛小説に、これほど泣かされるとはよもや思わなかった。

 映画化されているけれど、キャストがほとんどぼくの読書中のイマジネーションとフィットしない。これほど優れた文章による小説である。原作を味わうのがベストだろう。