シュンの日記なページ

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海辺の小さな駅

銭函

 札幌は何故かどこのホテルも満室(何だかパークゴルフ大会や学会やらが重なっているらしい)。東京から来た同僚の宿泊場所がとうとう一室も見つからず、やっと探し当てたのが、お隣の小樽市。それもあの小樽までは行かず、銭函という名の、小さな海に面した町に一軒だけある商人宿みたいな民宿旅館だ。もちろんクレジット・カードは使えず、風呂もトイレも共同である。朝夕食つきで7000円だから、まあ許してくれ。

 道庁付近で所要を終えると、暮れなずむ道路を西へ。眩い夕陽が石狩湾に沈む頃に、銭函に到着。宿は、海沿いの線路から、ぐいぐいと坂を駆け上った高台にあった。お辞儀をする同僚に手を振って、車で海辺にまた下り、銭函駅のちっぽけなロータリーに車を入れてみる。駅舎に入って、明日の時刻表を確認してみる。自分が乗るわけじゃあるまいに。それでも好奇心には勝てない。一番多い時間帯で、一時間に4本くらい走っている。他の時間帯は、せいぜいが30分に一本。地元の若い娘が待合室のベンチに座って携帯メールを覗き、その後ろでキヨスクが煌々と明るく周囲を照らすのは、道内ローカル駅の特徴である。

 駅前の赤ちょうちんに灯が入る時間で、無性にこの店に入りたくなる。小さく曲がりくねった道路が一本海沿いに走るだけの街に居残りたくなる。もちろん、じっくり酒を呑み、地元の人と話をして、銭函のことをもっとよく知りたいと思ってしまったのだ。

 昔は鰊漁で栄え、文字通り銭が唸った漁師町である。我が家から30分ほどのところ、思いがけず旅情を誘われるこんな町があって、駅では不機嫌な顔をしたミニスカートの娘が、「改札を始めます」の声に立ち上がり、二両編成の鈍行に乗り込んでゆく。客は他には二三人ほどしかいない寂しいプラットフォームだった。

 駅前のバス停でおしゃべりをしていた若い女の子二人組は、私が駅を出たときにはバスごといなくなっており、がらんとした駅前には海の匂いと、電車の警笛、まさにそれだけ。それしかない小さな町であることに、私は愕然とするのだった。

 ちなみにこの町の外れから小樽ドリームビーチが北に延びてゆく。札幌市民の海水浴場であるが、舗装は壊れ、タイヤが沈む。浜の砂は荒波に削り取られ、あまりに危険なので、昨年か、一昨年だったか、海の家はすべて陸の方に引越しをした。おかげで駐車場だったところが今は広々した砂浜になり、そこを暴走族やデート・カップルらが、真夜中に大勢訪れているらしい。ここから明け方に帰宅するゾク車たちが、私の家の近くを通りかかって札幌の真ん中に向かって走るので、夏の間開け放している窓の外の騒音は、相当に睡眠を妨害してくれる、らしい。私は意に介さないが。

 ちなみに、札幌ではもう、夜に窓を開け放して過ごす季節は、終わっており、私は相変わらず風邪気味。東京から来た同僚は東京も今朝の気温は22度でした、と嬉しそうに言っていたっけ。