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遡行的

crimewave2007-09-05

 毎夜、夜更かしして『楽園』を読む。面白いので一気読みしたいところなのだけれど、分厚い本は、遅読の私には、そう容易には読み進めることができない。海外翻訳もの方が早く読むことができ、日本語の小説では遅くなってしまうのは、なぜだろう。いつかやはりこれも花村萬月さん(なぜか最近「氏」「さん」がついてしまうのですが……(汗))のmixi日記で、小説を音読せず速読する人がいる、なんて話があり(もちろん音読といっても声に出すのではなく、頭の中で音読するのだ)、ああ、そう言えば自分の場合、確かに小説を音読しているなと思い当たったのだ。新聞、仕事関連の報告書、ネット情報などは、音読せず、情報としてインプットするため、視覚は入力装置としてだけ使うのだが、小説は頭、目、感覚で味わうために、視覚と脳との間に「擬似耳」みたいなものを介在させているようだ。そうしないと感覚までは沁み込んでこない。深く浸透させるためには、きっと、最低限の時間は必要となるのであろう。

 というわけで夜更かしの日々。

 その前の時間にはだいたい日記の更新とかメールのチェック。

 その前の時間には、ちょっとだけストラトキャスターを持って、ブルースコードを弾いてみる。楽譜ではわからないブルーノートなのに、なぜか6本の弦とフレットを指でなぞると、音になる。これじゃあ本当は駄目なのだけどね。おかげでメジャー・スケールのブルースには未だに苦労している。でもやはりブルースはマイナーよりもメジャーのほうが明るいためにより感情の起伏が浮き立って聴こえる気がする。

 その前は、たいていビールを呑んで、妻か息子かと夕食の宴についている。今日みたいに、途中で家族の夕餉が終わってしまい、ビールをいつまでも呑んでいて食卓に独り取り残される場合には、貯め置きの海外ドラマを一本ばかり見たりもする。

 その前には、最近では、通勤路で、あの事件のあったアパートの前を通りかかっている。今日は、アパートの一つの窓からカーテン越しに、向かいに駐められた車、またそのあたりで慌しく動く人物の動きをチェックしている住人の姿が確認できた。想像を逞しくした私は、きっとCSIみたいな科学捜査官が、行方不明の女性の痕跡を求めて、現場をチェックしており、それを、気が気ではない住人が好奇心旺盛に見つめているのだろうと、類推したりする。

 その前は、判で捺したように規則正しい、真面目な仕事に明け暮れる毎日を送っている。

 ところで、福永武彦の小説で、こういう描写があったなあ。まともに時間軸に沿って進む話と「遡行的」と題されて遡ってゆく話が交互に使われる前衛手法。こんな書き方をしているうちに、ふと思い出してしまった。福永武彦作品はほとんど読んでいるのだが、どれも二十歳前後のことなので、どの作品で使われた手法か思い出すことができない。確か新潮文庫だったか、沢山、家のどこかに眠っているはずだから、チェックしてみようと思う。写真は、その福永武彦の前衛手法が活かされた、三つの結末のある大作小説『死の島』。