野外ライブの風
そう言えば、昨夜、たくろうとかぐやひめのつま恋ライブ2006をBSでやっていたから、前の半分は見たんだった。全部で四時間なので見るほうも体力がいるのだが、一年前に現地で演奏した人々もそこに立ち会った人々も大変だったことだろう、体力的には。何せ、31年前のつま恋以来だから。たった二組のミュージシャンだけだけれど、当時のやっぱりトリはたくろうでしょう。この夜のライブを見てもたくろうとかぐや姫の温度差は激しかった。いわば現役と懐メロの差だ。
同じ昨夜から今夜にかけて石狩湾新港では、ライジング・サンという毎夏恒例の超巨大イベントが行われている。我が家から車で10分ほどの海岸で行われているはずなのだが、何故か足が向かない。今年のライジング・サンの私がチェックしたアーティスト:矢沢永吉、井上陽水、東京スカパラダイス・オーケストラ、Cocco、木村カエラ、エレファント・カシマシ、BEGIN、UA、ジョー山中、スチャダラ・パー、仲井戸麗市、スガシカオ……全部見るだけでも大変だし、四つのあちこちにあるライブ会場を往来しなければ見ることができない。おまけに当日券も全部売り切れという状態であるので、家から10分であっても、見たい聴きたい音楽に触れるまでの距離は永遠のようでもある。
野外音楽といえば、何と言ってもヴェトナムが煮詰まっていた1969年ウッドストックである。当時、反戦ムーブメントの大きな潮流としてアナーキズムに近いデカダンな雰囲気を纏った若者たちが農場に集結したことは一大ニュースだったが、それとは別のポップ音楽の流れとして、歌にエンターテインメント以外の要素が注入された大いなるエポックとして、ミュージシャンたちはこの機を捉えた。単に音楽の才能を知らしめた者たちもいたし、プロテスト活動という意識を多く持ってアジテートしそれが彼らの職歴に影響を与えたほどウッドストックと強く結びついたミュージシャンも大勢いた。その時代、そういう音楽に結びつくことが、我々当時のギター仲間でも流行りであり、ともかく格好よい気分であったのだ。
ピンク・フロイドは箱根アフロディーテで野外演奏をやったし、ポンペイのコロシアムで野外に巨大アンプを並べたビデオを録った。
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東京ドーム以前の後楽園スタジアムでは、グランド・ファンク・レイルロードも、サイモン・アンド・ガーファンクルも、キャンディーズも、野外コンサートを行った。サイモンとガーファンクルは、その後、セントラル・パークで再結成コンサートを開いてもいる。
グランド・ファンク・ツアー’75
セントラルパーク・コンサート(紙ジャケット仕様)
かくも野外コンサートとは歴史的であり、大きくも感じられるのだが、実は私にとって最も因縁のある野外コンサートは荒川河川敷にある田島ヶ原で毎年行われていたURC(ウラワ・ロックンロール・センター)主催のライブである。高校時代から、30歳の歳まで途中ブランクはあるものの、印象深く存在した。
特に高校時代の田島ケ原(写真)には、当時はまだマイナーであったロック界での大物バンド(つまり市民には認知されていない)が集結した。あんぜんBUND 佐藤允彦とがらん堂+中山千夏 エディ藩グループ ダムハウス、タージ・マハル旅行団 うたち 三和音 ハルヲフォン等々。私が最も感化されたのは、いつもトリをつとめるウエストロード・ブルースバンドだった。暑い夏の太陽と、自ら滴らせる汗、当時は生まれたばかりだったロックという新しい音楽のムーブメント。そして終わっていなかったヴェトナム。そんな時代の瀬音に心を痺らせながら、昼から夜までの長い時間を過ごした。
ちなみに石狩のライジング・サンの少し前、フォーク・ジャンボリーいわみざわ2007が開かれたのだが、南こうせつ、ANRI、斉藤哲夫など、こちらはこちらでローカルらしく、それなりマニア向けではないだろうか。