シュンの日記なページ

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海辺の湯宿にて

 この日の宿は浅虫温泉の一番古いような旅館辰己館である。窓を開けてがっかり。海側に新館を立てたせいで、せっかくの老舗本館から風景が失われていたのだ。古い建築文化よりも収容能力による収益性を採ったのだろう。商売は難しい。

 それでも温泉には満足。たっぷり湯に浸かり、発熱を促し、部屋に帰り、夕餉とする。部屋食の膳に、生ビールと熱燗を2合頼み、とりわけ熱い酒を唇に持ってくるうちにさらに汗が噴き出た。息子が卓球部仕込みの腕前を是非見て欲しいというので、食後には卓球にも付き合い、さらに滝のような汗。もう一度風呂に浸かり、寝る前に、自販機を探しついでに温泉街をうろつこうと、浴衣下駄姿で二人、それなりに闊歩したのである。立派な温泉ホテルに暗くて狭い裏通り。活気というものはないな、と見切り、飲み物を自販機から取り出し、夜の海を見つめながら息子と二人で喉を鳴らしてこれを呑んだ。

 昨日も納骨の折に息子には大変な忍耐を強いた。東北の老人たちに囲まれながら、同年齢どころか、私より若い人間はどこにもなく、酒と食べ物に和気藹々の、私たちとは血も繋がっていない人たちに囲まれて父は暮らしていたのだ。私を捨てた父を、私は凝りもせず訪れてきたのだが、同じように父への強い思いを息子は私に求めているに違いない。

 息子と風呂に浸かり、息子に背中を流してもらう。息子と卓球で技を競い合い(親子ともども中学校卓球部という偶然だ)、息子と夜の海を見に、散歩に出たのだ。思えば、ほっとするようなひと時が流れる陸奥湾の宵なのだった。