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純富良野産演劇『ニングル』

crimewave2007-06-15

 ふらの演劇工房の運営する山の上の劇場・富良野演劇工場に初めて足を踏み入れ、ここで行われるロングラン公演『ニングル』を観劇。

 日中帯広で仕事をし、夜に富良野入り。金曜日の夜19:30公演初日ということで、それなりに客足が早く、302席の客席も8割方いっぱいになっていたんじゃないだろうか。真の暗闇が作り出される空間のなか、奥行きのあるステージをフルに使ったセットも見事だし、スーパースターがいるわけでもない富良野塾生たちによる集団演劇の、体を使ったリズム感溢れる芝居は、熱気で満たされていた。

 倉本聰の原作・脚本14年ぶりの再演だが内容は前回とほとんど変わっていないと言う。倉本聰は、富良野プリンスの閉鎖になったゴルフ場に植樹を行う富良野自然塾をスタートさせているのだが、エコロジーと言われる今より遥か以前から一貫した森への回帰、伐採により水が涸れたり、河川に土砂が流れ込んだりという、自殺的開発の動きに警鐘を流していた。

 富良野という農業の町に、主人公は農夫たちだけのドラマを作り出し、森への回帰を歌う芝居を、まさにその土地に築き上げた芝居小屋で打つ、という土地にしっかり根を下ろした演劇文化がここにあって、それを観劇するというより、ぼくらは体感するといった方が相応しい。

 森に返すために風倒木を散らしてどんぐりを巻く、そうして活きた土に戻してやらねば木は育たない。芝居のクライマックスは風倒木を集団で太鼓のように叩く圧巻のリズムワーク。本当に魅せてくれる芝居である。

 ラストコールには杖を突いた倉本氏も姿を現わす。

 ステージが終わると入口では劇団員たちが整列して観客を送り出してくれる。倉本脚本のテレビドラマでも馴染みの深い森上千絵、久保隆徳、水津聡などの顔もあり。

 町に帰ってからくまげらに繰り出すと、初日公演を見終わった中年オヤジが3人(私を含め)、それぞれ一人でカウンターに着き酒を呑み始める。マスターを加えて、芝居の話、倉本さんの話、等々。永い年月に渡って芝居を観ている多くの地元の力によって、ふらの演劇工房は成り立っているんだとの思いを強くする。その富良野塾も三年で使命を終えようとしている。その後、塾生OBら(有名どころでは「Drコトー診療所」の脚本家吉田紀子がこの富良野塾一期生である)により、この演劇工房は引き継がれることになるのだそうだ。地元に、法人個人のサポーターが沢山いるのも心強い話である。