すれ違いドラマ 1
朝、出がけ、今日息子が塾なら迎えにゆこうかと聴くと、うん、お願いとの妻の返事。
塾の迎えは21時過ぎだから、車で迎えるには晩酌を控えねばならない。夫婦とも晩酌生活なので、週二回の塾への迎えを、担当割りしているわけだ。もちろん雪が消えたら、息子には自転車で通ってもらうが、冬には車の送迎が大抵の場合必要になるのが札幌郊外ドカ雪生活の不便なところ。
私が迎えの日は、ゴルフ・レッスンをかませるようにしている。冬季は時間割が早めなので、二時間弱のレッスンを終えると、塾の終了時刻にちょうど良いのだ。
夕方、息子から電話が入り、今日は塾はないよと言う。母ちゃんが勝手に塾があるって思って言っただけ。
しかしながら、既にゴルフをするつもりで仕事を早めに終えて定時退社の準備をしていた私は、ゴルフ・レッスンに繰り出す。すると今日は、レッスン・プロが前もって休みだと言っていたことを、ゴルフ練習場に着くや否や思い出す。まさにゴルフバックを肩に担ぎ一歩を歩み出そうとしたそのときに、気づく莫迦さ加減に、改めて呆れる。
家に早めに帰ることになった。妻子には、どちらも間違えていてちょうど良かった、と言い訳する。
明日は息子の塾だけど、と妻が言う。妻は呑み会があり、この子は「勝手に」迎えに来るとか生意気なことを言うから、迎えに行かなくていいからね、と拗ねている。息子は「勝手に」塾だと「思い込んだ」、と言ったのであって、「勝手に迎えに来る」とは全然言っていないのだが、妻を説得するのには相応のエネルギーを要するので、私は、明日富良野で夕方まで仕事だが迎えにはゆくよ、と告げた。
あれこれごちゃごちゃ書いたけれど、会話はすれ違い、記憶はすれ違ってしまう。こうしたものが、もう少しスタイリッシュになり舞台設定などがお洒落になり、全体のキャラが若返ったりすると、都会風トレンディ・ドラマのくだらないシナリオとしてうちの会社のOLたちなどに受けるようになったりすするんだろうな、と思ってしまう。若くもお洒落でもない、現実生活のすれ違いは、さらにくだらなく、空しく、それでいてちょっとだけ微笑ましい。