シュンの日記なページ

当別町スウェーデンヒルズ移住者 ブックレビュー 悪性リンパ腫闘病中 当別オジサンバンドOJB&DUOユニットRIOのVocal&Guitarist ツアーコンダクター 写真 スキー 山 田舎暮らし 薪ストーブ

日曜開業中

crimewave2007-01-21

 昨日から、いやここのところ一週間ばかりわずかに少しずつ、治療済みの歯の根元が痛み出した。昨日はこの痛みがひどく、土曜出勤の仕事場で、自分に余裕がなかった。痛くて、笑えないのである。おしゃべりに参加する気にもなれないのである。

 土曜の夜は、そのまま立食パーティと、自主的居酒屋だ。帰宅後も、結局痛みがひどくて、本を読むことができず。でも何故か文章を書くことに躊躇いはなく、普通にネットにあれこれを書き込み、二日前に書き始めた小説は、その先を書き継いでゆく。かえって痛みと熱にうなされているくらいの方が、あまり考えずに、自動筆記状態になって捗るみたい。

 ところでル・クレジオという作家をご存知か? ぼくはフランス語を専攻していたから、大学時代にはこのフランスで有名な作家を講読の授業で採ったことがある。"La fievre"『発熱』(1965)という今でも最も有名な短編集を扱う授業だった(既に絶版です)。「収録された十篇はどれも、日常のささいな身体的変調が招くパニック」を題材に描いたもので、当然、この中には歯痛を扱った短編もあった。痛みや発熱により人間の存在は、不確かなものから確かなものに格上げされる……というと御幣があるかもしれないが、カミュサルトルに代表される実存主義の系譜の比較的新しい位置に属する作家なので、ひねくれた実存作家というようなニュアンスで、ぼくらはこれを読んでいた。

 そんな本のことを思い出しながら、痛みを抱え、「ずっと存在している、おれは存在している」などと唱えていたのである……というのは、真っ赤な嘘。

 本当にやっていたことは、ネットで歯科医師会のサイトを調べ、日曜診療を実施している歯科医を調べたのだ。本日、午前中は、早起きして、さっさと朝食に、TV番組でダイエット効果がやらせだったことで生産倍増計画がきっと見合わせることになりそうな納豆を、TVとは関係なく習慣として平らげた。歯痛には、掻き込むタイプのご飯が最適である。

 自分の居住区ではなく、隣接区に日曜開業医が多く、しかも女性医師が多いみたいだった。うち一軒を覗いたところ、日曜日の患者は、やはり中高年のお父さんが多い。日頃、通院の時間が取れない中堅どころの企業戦士……あ、俺もか、などと照れながら、保険証を受付に提出したが、結局日中は予約がいっぱいとのことで、夕方に出直すことになった。ちょっとつらいので朝から診てもらえるところはないものかと、他の医院も回ったが、ネットでは検索に引っかかるのに実際は日曜診療をやっていないというあこぎな歯科医も存在するのだった。

 家に帰り、CSIを2本観て、午後は痛みをこらえるよりもと、布団にもぐりこんで睡眠に費やした。

 夕方、出直した歯科医では、腫れた上顎部に麻酔をかけ切開して膿や血液を絞り出し、歯肉に薬液を塗布。さらに内服薬(消炎剤、鎮痛剤、抗生物質)をもらって帰る。痛みにぐらつく頭を抱えながらも、車を悲愴感でいっぱいになって運転して、何とか家に帰った。きつく噛み締めていた止血用の脱脂綿を、途中、指で取り除いた。しばらくの間、痛みがひどくて、心臓の拍動に合わせた激痛というべきズキズキ感が、都合一時間は残ったと思う。ル・クレジオ描く通り、確かに存在を脅かされた感覚ではあった。

 夕食後、服薬したせいか、ようやく落ち着く。

 今日は、午前も午後も、実に天気のよい日だったのだ。手稲山が空の彼方で、スキー場はここだよ、おいでおいで、とニコニコ顔で手招きしているような、絶好のお出かけ日和だったのだ、本当は。