シュンの日記なページ

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廃線に沿って

 留辺蕊から置戸を通り小利別に抜け、陸別で東に向かい、津別の南を走り抜ける。と書いても大抵の人はどこのどこを通ったのかわからないと思う。今年で廃線になってしまった<ふるさと銀河線>に沿って走る道だ。陸別から本当は足寄、本別と通り、ワインで有名な池田に向かう。

 20年前に、池田町からまだ国鉄池北線と呼ばれていた頃の銀河線に乗ったことがある。小利別の無人駅に降り立つと、廃校を利用した旅人宿(北海道では、雑誌「とほ」にちなんで「とほ宿」と言います)夢舎(ゆめや)だけがぽつんとある。そこから若いヘルパーたちが威勢良くお客を迎えに出てくる。帰りもきちんと送る。教室を利用した食堂や寝室が、けっこう面白かったのを覚えている。汚い格好の旅人にまぎれてただ一人ネクタイ姿の人がいたのが不思議だったが、聴いてみると新聞記者で、いつもここを利用しているとのことだった。

 道内でも有数の寒冷地なのでホンダの試走場ができるんだと、山なみを指差して呟いていた宿主の表情をまだ覚えている。何しろ、池北線の廃線が既に決定していて、その後第三セクターふるさと銀河線という名で継承するなんて明るい話も全然わいて出ていなかった頃のことだ。

 2006年になり、銀河線もとうとうなくなった。道路からは民宿の看板も出ていなかった。小利別の駅跡に入り込むと、夢舎はまだそこにあり、看板を出し、車が何台か止まっている。営業はまだ続いているようだ。あれから20年、よくぞ耐えたと思う。北海道では列車利用の観光がすっかり下火になり、廃線はその動きに止めを刺している。

 夏の光の中で輝く時期の民宿はまだいい。冬の極寒のしばれのなかで、こうした山の中の土地を旅する人がどれだけいるだろうか。ほとんど車に出会うことのない山間の道路を走り抜けながら、個人的な思い出の上に、現実の残酷を思わず重ね合わせてしまった。